いつもお堂の周辺が掃き清められているのは
近所のおばあさんがお堂の手入れをされていることは知っていた。

桜も見事だが、おばあさんもつつながくいらっしゃると願いつつ
今年も見上げていた。

文殊堂は高知県黒潮町小黒の川地区にある。
近くを流れる伊与木川に小さなコンクリートの橋がある。
欄干がないから沈下橋なんだろうと思う。

文殊堂は智慧(洞察力)を司る文殊菩薩をお祀りしているところから
転じて学業成就、志望校の合格を願うと解釈されたのだろう。
この桜が咲く頃はまさに合格発表の時期。

本人や家族の願い事が綴られた絵馬が躍動する。
県外からも寄せられた願い、それぞれ叶うといいね。

この桜はいまが盛りなのか樹勢が盛大で花の色が濃い。
花の気が遠くまで飛んでいるかのよう。
晴れ晴れしい―。
誰もが集まる観光名所ではないけれど
この時期にここへ来られることは
桜守のおばあさんとともに心に妙吉祥の光背をともす。

この桜、見る方向によって趣が違う。
朝と夕方の光によっても違う。
いつ見ても玲瓏艶々なのだ。





それなのにこの桜に気付かない人はまったく感知しない。
桜の精のなせる技?




再びやってきた出会いと別離の春。
人はめぐる季節に時間の流れを悟り
季節は人の一生を数えて流れていく。
それだけに儚くも燦々と照り返す木の花咲くや妙吉祥三月。
桜の精は人の心に投影された光粒子の揺らぎなのかも。

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