ゆこうはだいだいとゆずの自然交配種、
上勝町を中心に那賀郡、海部郡の一部に存在する。
地元のぽん酢には欠かせない果汁。
すだち、ゆず、ゆこうはそれぞれ個性がある。
すだちとゆずは果汁というより果皮に特徴を感じるが
ゆこうは果皮というよりは果汁に魅力がある。

コ島を代表する香酸柑橘(こうさんかんきつ)三姉妹を例えると
おっとりと知的な姉は上品でくせがないおいしさで長女の風格の「ゆこう」、
明るい笑顔をふりまく個性的な性質で周囲を自分に染めていく次女の「ゆず」、
きりりと小顔だが小気味のよい口調で相手をさわやかな笑顔に巻き込む三女の「すだち」。
この三種をブレンドしてつくるのがコ島の酢飯。
11月頃から勝浦郡の直売所でゆこうの生果が並ぶようになる。
買ってから少し熟成をさせて数日前に初絞りを飲んでみた。
熱っぽいのに出張が続く日々にどうしても身体が欲しがった感じ。
まるごとていねいに水洗いして適当に切り分けて
絞り器にかける。
それを湯で割って蜂蜜を入れるのが冬の風物詩。
身体が温まるし風邪の菌が死ぬような感覚がある。
(ゆこうに優れた機能性があるのは体感的に間違いない。研究機関で明らかにしてくれるとうれしいのだが)


今年はさらに変わった商品と合わせてみた。
手元にあるのは柿とゆこうのコンフィチュール。
素材は、柿、ゆこう、砂糖、洋酒である。

韓国ドラマが流行した頃、
NHKで「宮廷女官チャングムの誓い」というドラマがあって
主演のイ・ヨンエの清純さが話題となった。
その少女時代、先生が料理の授業で生徒に味見させて
甘みを何で付けたかを当てさせる場面があった。
誰も答えられないなかで
主人公のチャングムが「柿でございます」と答えて
料理の先生を驚かせる場面があった。
柿は砂糖の代わりに使える上質の甘みである。
その柿をゆこうと使う作り手の感性に驚いた。
ゆこうの特性に注目して取り組んでいる人たちが県内には数人いる。
味匠「濱喜久」の濱田利宏さんもそのひとりで
ゆこうドレッシング、ゆこうちり酢は出色のできばえである。
さしみをちり酢でいただくと、普段使っている醤油が白身魚の魅力を邪魔しているとわかる。
なでるようにちり酢をつけて口に放り込むと素材そのままでは感じにくかった良さが抽出される。
素材を活かすゆこうの特徴を初めて商品化されたと言って過言でない。
お店で手に入るので調味料としてご紹介したい。
(濱喜久さんの大将は気取らないけど地元素材への愛情が感じられるよね)
【濱喜久オリジナル】ゆこうドレッシング 1本 500円(税抜)
【濱喜久オリジナル】ゆこうちり酢(白ポンズ)1本 500円(税抜)
→ おみやげ用として購入できる
→ ブログで紹介されている https://yoko-leaf.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03
ゆこうはゆずと違って独特の色がなく
透明感のある酸味とまろやかな果汁感がまったり感と鮮烈感を併せ持つ。
ゆこうそのものがおいしいだけにゆこうを活かすのは少々難しい。
ゆずだと誰がどんなものをつくっても風味がわかりやすく、
ゆずを活かしているねということになる。
(裏を返せばゆずの個性が相方よりも目立つ)
ところがゆこうは相手を活かす風味の透明感とまろやかさがある。
これと組み合わせてうまくいくのは実は難しい。
その素材をビスコッティにしておいしいものをつくりあげた人が
今度はコンフィチュールにしてみたのだから
季節の素材をどう料理しているかがゆこうファンなら気になる。
パンやヨーグルトにかけてもいいが
まずはそのまま味わってみるのがいい。
包み込むような果実感のあるまあるい酸味が溶けていく
その一瞬一瞬が愛おしい。
おそらくゆこうをもっとも活かした食品(菓子)になっただろう。
決め手は熟れた柿と組み合わせた点にあると思う。
この商品は旬の果実を使うhowattoさんの方針で数日しか販売されない。
次回の販売(12/7)が今年最後の機会となりそうとのことである。
そんな貴重な食材を大胆にもゆこう果汁の湯割にも入れて見たのだ。
するとまろやかさとおいしさがゆこう果汁をひっそう引き立てる。
いつもは蜂蜜だけど、メープルシロップも少量入れている。
感じたことは
やさしい風味なので湯割りに混ぜずに、
やはりスプーンでそのままスイーツとして食べるのがいい。
柿の上品な甘みはゆこうのおいしさを邪魔せず
ゆこうの酸味は柿に足りない快感をもたらす。
ゆこうの季節、コ島でしか入手できないこの果実を果汁として味わえれば
地元の風土が近寄ってくるのでは?
ゆこうを飲めば、これ以上の飲み物は要らないと思えてくる。
おいしいのは当たり前だけど
それ以上にこの包まれる安心感、心地よさ、ひだまりのなかで感じる酸味の輝きというか。

→ ゆこうについての記事一覧
追記
チャングムが肉の下味を柿と言い当てる名場面は第5回。
https://terutell.at.webry.info/200702/article_2.html
料理の真髄を突いていると思いながら見ていたな。
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