2018年11月18日

四万十川 中村から岩間まで 書きたいことがありすぎて

四万十川―。
書きたいことがありすぎて。

NHKが打ち出した「日本最後の清流」の頃から通っている。
当時は高速道路もなくコ島から10時間近くかかった。
四万十川がもっとも四万十川らしいのは
穿入蛇行を繰り返す中流から下流にかけて。
昭和、大正、十和(いずれも現在は四万十町)の鉄道沿線と
江川崎(日本で一番熱い気温の場所)からくるりと向きを変えて
中村をめざす下流域。

なかでも江川崎から下流はいまも「日本最後の清流」である。
川エビ(テナガエビ)、アユ、ウナギ、ゴリ、モクズガニをねらう専業の川漁師の存在、
小さな谷筋まで黄色い腹のウナギが上る。
沈下橋をはるかに水没させる洪水もときどきあるけれど、
川面を行き交う夢幻の羽色の野鳥、
夏の夜の火振り漁の松明、
沈下橋を渡る花嫁行列。

南国の暮らしは川とともにある。
川は変わることなく山裾を洗って悠然と流れる。
人の世の桃源郷と自然の深沈としたたたずまいが
20代の青年の心を捉えて放さなかったのである。

下流は依然として旅の難所である。
全長200km級の日本の川で下流に平野をつくらないのは
島根の江川(ごうがわ、ごうのがわ、全長194km)と四万十川(全長196km)ぐらいである。
(吉野川は194kmだがコ島平野を擁しそこから産する藍が地域経済を潤した)
流れが緩やかであること、
途中に盆地(三次、窪川)があって経済の中心地となっている点も共通である。

四万十川でも江川崎(合併前の西土佐村の中心)から中村(旧中村市の中心)までは
崖崩れが頻繁に起こる区間であり、産業用の大型車の通行も多い。
特に口屋内などの集落を通る際に気を使う。
(といっても全国から集まる長期の連休以外はさほど混むことはない。渋滞が起こるとしたら離合渋滞である)離合が苦手な都市部の人は車で来ないほうがいい。
鉄道は通っていないので、高知西南交通の路線バスを使うのがいい。
http://www.kochi-seinan.co.jp/obj/pdf/local_ekawasaki_shimoda.pdf

いまでも桃源郷のはずだが人々は立ち止まらない。
流域の人口減少はとまることなく
専業の川漁師もいまはいらっしゃるかどうか、
四万十川に憧れて移住された方も定住されているかどうか、
人生も呑み込んで川は流れていく。

11月の晴れた日、中村から江川崎経由で窪川をめざそう。
国道56号線を通過しないて四辺形の三辺を行くコースである。
そういえばこの日は難所の窪川越えにバイパスが開通する日だった。
(江川崎をめざしたため開通日に通ることはできんかった)
このバイパスの開通は地元に歓迎される。
国道56号線の高知〜四万十間でもっとも難所だから。
→ 片坂バイパス

まずは、中村の郊外にある四万十川最長の沈下橋、
佐田(さだ)の沈下橋。
まだ川霧が残る時間である。
※沈下橋=ちんかばし、は洪水時に水没する橋。水の抵抗を少なくするため欄干はなく橋桁も水流を極力受けないようにしている。対岸を最短距離でつなぐため地域住民に使い勝手の良い橋。徳島では潜水橋=せんすいきょう、と呼ぶ


沈下橋へ降りていく道に駐車場とトイレがあるので
そこにクルマを置いて歩いてみよう。
このところ雨が降っておらず秋の渇水期で水深は浅い。
DSCF7183-1.jpg

DSCF7181-2.jpg

DSCF7176-1.jpg

佐田の沈下橋を渡り終えて振り返る。
目の前の流れは傍流で本筋は対岸にある。
DSCF7179-1.jpg

次に三里沈下橋。佐田からクルマで5分程度の場所にある。
DSCF7192-1.jpg

沈下橋を遊覧船(屋形船という)がくぐっていく姿がよく見られる。
土佐の小京都といわれた中村ならではの川遊び。
DSCF7189-1.jpg

高瀬沈下橋
周辺はイノシシが出没しそうだ。大河の下流とは思えない静けさ。
DSCF7192-1.jpg

勝間沈下橋
橋下流の奇岩、静謐の水を湛えた四万十の流れが悠久を感じさせる。
DSCF7194.jpg

DSCF7211-1.jpg

DSCF7204-1.jpg

山水画のような空気は大河と山がつくりだしているもの
DSFT0011-1.jpg

橋から上流をみれば、山裾(河畔林)を川が洗う。
山と川から恩恵と洪水の両方をいただきながら
生きていける場所を見つけて人が住んでいる。
それが南四国のヒトと川。
DSFT0019-1.jpg

釣りバカ日誌のロケがあったと
DSFT0008-1.jpg

静かな川面の奥行きは絵画のよう。小舟を漕ぎ出してみれば…
DSFT0032.jpg

四万十川は中流域よりも下流域が水質がいい。
人口負荷が少ない地域を流れることで水生生物等による自浄作用が優るうえ
流れ込む清冽な支流、山の湧き水があるためである。
200km級の大河の下流ではもっとも水質が良いだろう。
下流域では人口密集地を流れる支川の影響のある仁淀川を上回る。
DSFT9995-1.jpg

川好きが集まるのは口屋内(くちやない)の集落。
ここから四万十川随一の支流「黒尊川」をたどることもできる。
口屋内沈下橋は老朽化のため落橋の怖れがあり通行止めが長く続いている。
(昭和30年竣工で60年以上経過)
自治体も予算が厳しいのだろうが…。
DSFT0047-1.jpg

DSCF7225-1.jpg

民宿が置いたオブジェにはこう書いてある。
「四万十川ひとつ残せず私たちの存在する意味はあるのだろうか」
DSCF7227.jpg

お堂があり、そこから川を見下ろせる
DSCF7231.jpg

DSCF7233-1.jpg

DSFT0059-1.jpg

次は四万十川のポスターでおなじみの場所、岩間の沈下橋。
四万十川が大きく蛇行しそこに架かる沈下橋として人気がある。
DSCF7236-1.jpg

ところが、橋の一部がない。
DSFT0068-1.jpg

DSFT0072.jpg

調べてみると橋脚の老朽化が原因のようだ。
修復には多額の費用が必要なため
市ではふるさと納税型のクラウドファンディングを募っている。
https://www.furusato-tax.jp/feature/detail/39210/2439


在りし日の岩間沈下橋を載せておこう(2008年夏、2016年春)
川下りの最中でカヌーを岸に停めてここから飛び降りたことがある。
DSC_9145_1.jpg

DSCF0470-1.jpg

晴れた秋空を映す四万十川。
でも五月の風が若葉をそよがす季節がもっとも好きだ。

四万十川は江川崎から予土線沿いに進むことになる(続く)
posted by 平井 吉信 at 13:24| Comment(0) | 山、川、海、山野草
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: