海部川の支流母川(ははがわ)は、湧き水を集めて流れる里の小川。
平地を流れるため瀬や淵を形成することなく浅い流れが続く。
河畔には草や樹木が生い茂り、ナマズの生息密度が高い。
この母川で一箇所淵を形成するのがせりわり岩の周辺。
河畔林を洗いながら蛇行する母川が大きな岩の根をえぐった淵。
ここがオオウナギの生息地といわれている。
母川のオオウナギは体長1メートルを超える。
十数年前の大水のときは周辺の田んぼに上がっているのが見られたという。
オオウナギとともに母川を有名にしているのが蛍。
海部郡那賀郡では日和佐川、那賀川支流の赤松川、古屋谷川などでも目撃されるが
生息密度が高いのは母川だろう。
室戸岬の帰りに夕暮れに遭遇することになった。
ちょうどホタル祭りが開かれる夜のようで
会場となる河川敷には高瀬舟に乗りたい人たちであふれている。

ぼくはもう少し上流にいた。この辺りは人が少なく周囲に灯火が皆無。
この日は月明かりもない。
暮れる前の母川の様子

生態系豊かな川が四国にあることの価値を学び
保全と発信を地道に行うことが観光組織の設立よりも大切ではないか。
(特に海部郡の場合は集客施設で大勢を受け入れるのではなくここを気に入る一人と関係をつくっていく縁結びが観光になるような気がする。DMOの成否は思いと行動力と戦略を持った民間プレーヤーがグループを形成するなど地域の特性に依る)

遠き山に日は落ちて…(19時半頃)

静かな川の時間が闇に包まれて始まる
(川面に水紋が立ち、カジカやヒグラシの声に包み込まれつつ星が一つ二つと輝きながら暗闇に包まれる時間が好きで「川の時間」と呼んでいる。この日は19時40分過ぎにやってきた)
19時45分頃、川沿いの草むらにおびただしい光が明滅するようになった。
まだ飛び交うというのではなく、草に停まって待機しているよう。


19時52分、ホタルが目立って増えてきた。どこにいたのだろうと思えるぐらい。

19時56分〜19時58分 草むらから離れて飛び交うが遠くへは行かず周辺を飛び交うようになった
南の銀河面で10センチ反射40倍の視野で明滅する散開星団のように美しい。
(天体観望が好きな人にはプレアデス星団を散りばめたヒアデス星団のような、といえば伝わるだろう)
20時を過ぎると闇に包まれる。
デジカメの増幅されたEVFでも光跡以外は見えず
ピントは合わせられない。
(ピントは無限遠ではなくそれより近い)。

20時5分を過ぎるとホタルが活性化して
光の明滅が同調しているように見える。
生物の不思議な意思疎通としかいいようがない。
ホタルは人に見せるために明滅していないのだが
不思議さを受け止める心は限りなく穏やか。

星降る星夜とホタルの灯火、
ともに自ら光りながら空間に存在を知らせる。

いま何かに苦しんでいる人がいたら
降り注ぐ光に身を置いてみては?
ヒトはもちろん発光しないけれど、
一人ひとりの細胞は光を放っているはず。

誰かのつくったモノサシに踊らされなくていい。
生きていることそのものが人生の目的なのでは?
(そうはいってもどうしようもないことがあるかもしれない)
何のために生きるかは後付で決まること(決めることではなく)。
だったら無目的に生きてみては?

明るい流れ星が視野を横切り
小さな光が滝のように川面に降り注ぐ母川の夜。
ホタルの明滅が終わる前にここを去って
明日するべきことに備えるなら、違った一日になるのかも。
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