2017年06月03日

シャクナゲを見て思いだした 岩崎良美


いや、80年代のアイドルは日本の歴史の星座だね。
70年代の山口百恵、キャンディーズから受けつがれた
80年代の松田聖子、中森明菜、岩崎良美、菊地桃子、斉藤由貴、荻野目陽子…。
(余談だけれど、ぼくの父はデビュー直前の中森明菜を見て、この娘は売れると思ったらしい)
互いに影響しあいながら一人ひとりが輝いている。
松田聖子についてはよく触れているけれど
いまは岩崎良美が浮かんできた。

岩崎良美といえば、赤と黒、涼風の初期の頃の初々しさもいいけれど
どんな難曲もさらりと歌いこなしてしまう。
姉は気持ち良く歌い上げる。
妹は、天使の高音でさえずりながら、ささやいたり、強い地声で凄んだり。
運命を受け容れてしたたかに生きる掃きだめに咲くバラのような歌い手にもなれる。
(YouTubeで生歌唱を見ると、ぐいぐい引き込まれる。宝物の歌手だね)

愛してモナムール
https://www.youtube.com/watch?v=dmJ-0XDqEFk

愛はどこへ行ったの
https://www.youtube.com/watch?v=FzangHs9uxo

恋ほど素敵なショーはない
https://www.youtube.com/watch?v=6-UQ5dcMB5Y

月の浜辺
https://www.youtube.com/watch?v=WqoOD9hhKig

オシャレにKiss Me
https://www.youtube.com/watch?v=8wVNBk716rg

だから、作家陣が次々と実験的な楽曲を彼女で試す(といったら怒られるか)。
同世代の日本のファンの等身大の日常とは違う非日常のヨーロッパ的な情景と
素人がカラオケでは歌えない移調、転調、リズム感を備えた難曲が続々と。
これでは大衆の心は掴めない。
けれど、そこを涼しげにこなすところが岩崎良美を感じるところ。

彼女、どれだけリズムが弾んでも、日本語の発声が乱れない!
身体のなかに吸い込まれていく歌(日本語の発音)です。
(ロックは日本語のリズムと合わないので母音と子音を不自然に伸ばすというのは技術がないのだ)
ぼくのなかでは、これ。
「恋ほど素敵なショーはないでしょう」
https://www.youtube.com/watch?v=D_teQVw-gRk

日本のポップスの歴史に残る名曲と思っている。
こんな曲をいつも描けたら作家冥利だね。
作家陣が良い仕事をしている。

ギターの刻みにほだされて風に吹かれる羽毛の歌い出し、
そっと空間に置かれた言葉が立ち止まる。
「お願いよここにいてね さよならは いや」
フレーズの最後で消え入るそよ風のためいき。

サビが移調しながらパターンで循環する。
(古典的な作曲の常套手段だけど)

調性が変わるたびに気分を変える。
編曲が次の場面を、さあ、こっちよと案内する。
楽曲を活かす大陸的な抑揚の伸びやかな編曲、
楽曲から浮かび上がる軽やかに弾む声。
幾重にも切なさを編み込んだタペストリー=耳から離れない奇跡の楽曲。
こんな歌を聴かされたらデビュー前のアイドルは諦めてしまうしかない。

アルバムをすべて聴いたわけではないけれど
音を愉しむのならWeather Report、 
ヴォーカリストとしての存在感ならWardrobeかな。

不思議に思うのは1985年のプラザ合意が音楽の分岐点にもなっているのではと。
80年代のアイドルたちも80年代後半には別の領域に行ってしまった気がする。
(そしてバブルの崩壊を迎えるのだ)
アイドル以外では
松任谷由実もオフコースも80年代になって音の厚みを増しながら洗練させている。
それぞれ「SURF & SNOW」、「WE ARE」のような良い音のアルバムを完成させている。
(それはそれで頂点の音楽と思う。でも70年代のフォーク調のテイストから失った情感もある)
2010年代の音楽がこの時代の輝きに及ばないのは、
時代がアイドルやポップスを後押ししたところもあるのではないか。

というわけで、例によってCDは限定発売。
(そううたっていなくても在庫が終了後再プレスされる保証はない)

3枚組のシングル両面コレクションがもっともおすすめ。
音質もそれ以前のと違うのが試聴音源からもわかる。
(視聴もできる)


次いで2枚のオリジナルアルバムとシングルA面を組み合わせた特別企画もの。




この辺りから聴いてみたら?
DSFT1177-1.jpg
あでやかでぽっと浮かぶけれど 気がつけば存在感、妖艶なシャクナゲのようだね。
タグ:アイドル
posted by 平井 吉信 at 18:51| Comment(0) | 音楽
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