2017年05月14日

霧雨の湿原に薄日が射した ヤマツツジの桃源郷 二度とないこの瞬間 黒沢湿原


嵐が通り過ぎた翌日、仕事の帰りに阿波池田I.Cで降りて向かったのは
黒沢(くろぞう)湿原。
池田町から林道漆原線へ入る行程がわかりやすい。
道幅も十分で舗装もされているが、崩れやすいのが難点。
このところ慢性的に改良工事があるようだ。

林道を通過中にいつもの展望台に立ち寄るけれど霧が立ちこめて展望はなし。
そう。見たかったのは霧にむせぶ湿原。
この時期、サキゾウはもちろん、トキソウも開花していない。
春のスミレも終わっているだろうし、特に見るべき花はないと思っている。
ただ、霧の湿原が見たかっただけ。

湿原に到着するとひんやりした外気温。
霧雨とも霧とも言えないような湿度感の高いむせるような天候。
雨具を着てカメラを空気中に曝さないよう準備をしていると
霧雨がぴたりと収まった。
天気予報は回復傾向と言っていた。
もしかしたら、天気雨で虹が出るかも、などと下心も。

この日は新たに追加したフジX-T2の2回目の撮影。
微妙な光線下でどんな映像を見せてくれるのかとの期待もある。
DSFT0247.jpg
雨は止んだ。
鳥のさえずり、風に揺れる葉音、標高の高い湿原のすがすがしい気に浸って
木道をコツコツと歩いて行く。
自然のなかにいる―。音だけの幸福感。

人は生きていれば、それだけで幸福なのではないか。
その幸福を感じる回路を閉ざすのは自分自身ではないか。
とはいっても開け方がわからず、もがく人もいるかもしれない。
自分自身をむしろ遠くから他人を眺めるように観察してみてはどうだろう。
不幸をまとっているだろうか。幸福とは縁がないと言えるのだろうか。
だって、幸福の定義などないし、あったところで自分とは無関係。
だったら、自分で幸福を感じてみたらそれで十分ではないか。

おもしろいことに、富とか名声などが幸福感につながらないこともわかっている。
むしろ物質的な満足感は細胞の炎症を引き起こす、
という痛快な研究成果がある。
ここ数年の話だけれど、幸福、幸福感について解明されてきている。

湿原を歩き始めたときはそんなことも頭を過ぎるのだけれど
次々と新たな場面が目の前に現れると
獲物を前にした動物のよう。
ただしアドレナリン(戦闘/逃避本能)ではなく
空気に溶け込んでいくような存在が消える充実感。


(写真やカメラに興味のない人はこの段落は読み飛ばして)
新しく追加したのはフジのX-T2
このカメラは何度か触れてみたけれど
露出補正ダイヤルが使いづらい。
野外での負荷の高い使用に耐えるべきという
一部の意見を取り入れたのかもしれないが、
それによって99%を占める日常の撮影がしにくくなっている。
(プロサービスなどの特注で対応すれば事足りる)
露出補正は適度なクリック感さえあれば羽毛のように軽く動かしたい。
(しかもこのカメラ、軍艦部の内側にあるので、どんな肥満の人でもお腹でダイヤルを動かすことはできない。ミラーレスは撮像素子が映し出すので仮に露出補正のダイヤルが動いていても撮影する瞬間に気付くことができる、それなのになぜこんなに固くする必要があったのか?)
撮影って空気のような行為。
操作することが苦痛になったらそれはどうだろう。
X-T2は売れているけれど、
一見完成度が高そうで練られていないと感じていたから。

一眼レフのようなデザインもミラーレス風でないけれど
ダイヤルを3つ装備したデザインはむしろ好きだ。
まんなかにのぞき穴があるのは液晶ディスプレイに鼻の脂がついて
画像の確認がしづらくなると予測したとおり。
この点ではこれまで使っていたX-E2が洗練されている。
だから併用(追加)することにして
X-E2は、XF18-55mmF2.8-4 を付けて
X-T2には単焦点(XF14mmF2.8 R、XF35mmF1.4 R)を付ける。
やがて発売される中望遠マクロが楽しみではある。

カメラの話は置いといて黒沢湿原を描写してみる。
山野草は端境期だけれど
ひとつだけ萌えるような盛りの木の花があった。
これは知らなかった。
知らなかったけど、言葉を失う華やかさ。
それは…ヤマツツジ

歩道のあちこちで、周囲を丘に囲まれた湿原のあちこちで
それぞれ色が違うヤマツツジ。
道路の植え込みにあるような蛍光色ではなく
日本固有の朱を帯びたと形容したい、鄙びたあでやかさ。
それが重なり合って輪郭がにじむように饗宴している。
まずはこのカットから。
どんよりとした大気、その湿原の空気にひんやりと開いた花。
DSCF7676.jpg
X-E2+XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS プロビア

見慣れた色だけれど鮮やかに再現してくれた。
露出はこのぐらいの切り詰めた感じがこの空気感を伝えているようで。
でも、当初から感じていたあざやかな色(フジでは記憶色と呼ぶ)の違和感が残る。
ぼくがニコンを併用しているのは、色を通じて知りたいことがあるから。
(ニコンD7200では色の不自然さは感じない)。

湿原の丘を彩るだけでなく湿原にも光をお裾分け
DSCF7694-1.jpg
X-E2+XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS プロビア)

ここからはX-T2+XF35mmF1.4 Rで。
驚いたのはこの色彩。

X-E2など第二世代の画像処理では、
プロビア以外はほとんどフィルムシミュレーションを使わなかった。
ベルビアで花を撮れば飽和して微妙な陰翳がつぶれるし、海や空が一本調子となる。
(サイケ調のアートなどには良いだろうが、ぼくの撮りたいものには向いていない)
アスティアは色彩がはしゃぐ感じ。
プロネガスタンダードは忠実なようだが、生気に乏しい。
かつてフジから発売されていたフィルムを模した色再現が選べるのだけれど、
どれも変化球としか感じられず。

X-T2のそれは第三世代の画像処理となっている。
これ、プロネガ スタンダード。
あの地味だったものが滋味豊かな再現に。
DSFT0252.jpg

これもそう。息をのむようなやわらかくも濃密な再現DSFT0265-1.jpg

同じ被写体でプロビアとプロネガを比較したのが次の2枚。
DSFT0266.jpg

DSFT0267.jpg

うん、どちらも使える。
いや、そんなマニアックな話はどうでもよく、ひたすら花が空気に溶け込むような。

生きる歓びが湧いてくる。プロビアにて。
DSFT0277.jpg

湿原にぽっと浮かび上がるユリのようなツツジ。
このしとやかさ、プロネガでなければ。
まるで女性を撮影している気分になってくる。
DSFT0272s.jpg

湿原の中景をベルビアで。
DSFT0311.jpg
第二世代(X-Trans CMOSU)では色が飽和するベルビアはまったく使えなかった。
薄曇りなどの遠景であっても
被写体をすべてベルビアトーンにしてしまう。
これではやわらかな自然の息づかいが感じられない。
ところが第三世代(X-Trans CMOSV)ではベルビアはその存在感をプラスに変えている。
銀塩写真での偏光フィルターのように緑を明るく、水面を暗く映し出す。

同じ24MセンサーのニコンD7200。
Flat Rich Colourという自作のピクチャーコントロールを使用。
第三世代フジのプロネガとも似ている(以下3コマ)。
湿度感の高い空気に溶け込みながら、
そこから妖艶な気がぽっと浮かび上がる。そんな表現ができる。
D7N_5538.jpg

D7N_5615.jpg

D7N_5624.jpg

再びX-T2(XF35mmF1.4 R)で
カエデの新緑が風にたなびくさまが切なくもうれしい
(プロビアとベルビアを適宜。見る人が見ればどちらかはすぐにわかるでしょうから)
DSFT0303-1.jpg

DSFT0313-1.jpg

DSFT0331-1.jpg

湿原の南端は滝となって落ちる。これは最初の滝。
ここから先にさらに落差の大きな滝があって
滝の上を遊歩道から眺められる。
(誰もいない。やはりここは四国、徳島)
DSCF7711.jpg

沢沿いのツツジは水辺の上にてうたう
DSFT0320-1.jpg

DSFT0324-1.jpg

行きは遊歩道、帰りは林道を通るのがおすすめ。
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DSFT0335.jpg

やや薄日が射してきた頃、湿原を望む丘に上がってみた。
DSFT0353-1.jpg

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言葉で語ることをやめてしまった。
蛙の声が響く池田町の黒沢湿原、雨も上がれば鳥のさえずりも音高く。
DSFT0417-1.jpg


追記

X-T2の再現性は、前世代を凌いでいる。
http://amzn.to/2pxJflD
第二世代では鮮やかさを志向したものが
第三世代では色は深みが増している。

深みとは色が浮き上がらないでしっとりと被写体にたたずむこと。
精細感は言うに及ばず、階調の豊かさが違う。
解像度や切ればかりでなく、大人の味わいを付加したところがいい。
フィルムシミュレーションごとの
色の個性が立ってきたのに、色の違いが少なくなっている。
スマートフォンやInstagram用とは異なる土俵でこの世界を伝える道具としての使命がある。
X-Trans CMOSV搭載機は1世代前と比べて進化している。

さらに、7種類のオリジナルシミュレーションを準備した。
(1)プロビア・晴れ …これがベースでホワイトバランスをAUTOと併用
(2)ベルビア・風景使用 …オリジナルのコントラストをやわらげて画面に潤いを出している
(3)プロネガ・忠実使用 …オリジナルをチューンアップして見た色を忠実に再現しつつ見映えを付加
(4)クラシッククローム・ポートレート…透きとおる肌の質感を陰影感を再現
(5)アスティア・夢ごこち…巷で流行りのInstagram向きの仕様
(6)アスティア・リアリティ… 記憶色をやわらげながら立体感を付加したもの
(7)プロネガ シネマ…色温度も代えつつソフトな湿度感を伝える描画
※ モノクロはカスタマイズの必要はないと判断するので、フィルムシミュレーションから直接選ぶ。

いずれもダイナミックレンジは100%として操作性(というより記憶)を統一している。
(DR400%に設定すると感度も上がってしまう)
それよりはハイライト、シャドーの増減で調整している。

なお、第二世代と第三世代の色再現を比較された人がいらっしゃる。
感じているとおりの再現結果となっているようだ。
http://ganref.jp/m/fukunaga_kunihiko/reviews_and_diaries/diary/13952
http://ganref.jp/m/fukunaga_kunihiko/reviews_and_diaries/diary/13951

この方は、X-T2の改善点等について的確なレビューをされています。
特にインターフェイスの詰めが甘い点など同感です。
(貴重な情報とデータのご提供、ありがとうございます)
http://ganref.jp/m/fukunaga_kunihiko/reviews_and_diaries/diary/14138http://ganref.jp/m/fukunaga_kunihiko/reviews_and_diaries/review/10396

ぼくもフジフイルムに要望を。
前面ダイアルにISOを割り振ることができるのだけれど
そうなればISOダイアルの表示とは異なる場面が生じる。
画面を覗き込んで小さな文字を見て確認する不便さ。
メカニカルダイアルでも電子切り替えでもどちらでもどうぞの姿勢だが
それよりも操作の完成度を上げていくことが先決のように思う。
フジフイルムには、可読性や視認性なども含めて
人間工学的(インターフェイスもハードウェアも)な検証でブラッシュアップして欲しい。

さらに追記
純正グリップMHG-XT2を付けることで
握りの安定は格段に向上する。
http://amzn.to/2qFnLmE
また、アルカスイス互換の雲台に取りつけられる。

地面すれすれのアングルで地面にカメラを置いて撮ることが多いので
本体の汚れや傷も防げるという利点もあり。グリップは必須かも。
速射性は、X-E2のほうが優れている。
ファインダーに目を充てる動作の速さ(左にオフセットしているため)、
カメラそのものの威圧感がないこと。
フラッシュを内蔵しているのもいざとなれば使えるので。
開発が噂されるX-E3が楽しみである。
タグ:2017 黒沢湿原
posted by 平井 吉信 at 19:46| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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