田部京子を知ったのは、吉松隆の佳曲「プレイアデス組曲」の演奏で。
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今回、発売されたモーツァルトの2作品が1枚に入ったCDを求めた。
モーツァルト:
ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331(トルコ行進曲付き)
ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
田部京子(ピアノ)
小林研一郎(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団 ※
オクタヴィアレコード OVCT-00125
2015年6月28日 東京・サントリーホールにてライヴ録音 (ピアノ協奏曲第23番)
2016年9月19-20日 埼玉・富士見市民文化会館(キラリふじみ)にて収録 (ピアノ・ソナタ第11番)
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K331は、第3楽章がトルコ行進曲として知られる作品。
トルコ行進曲は、リリー・クラウスのモノラル盤が忘れられない。
感情の趣くままに刹那に燃え立つ生命力を持ちながらも
端正な造形の古典美を誇っている。
録音は、パリのシャンゼリゼ劇場を愛してやまなかった名手、アンドレ・シャルランの手によるもの。
ワンポイントマイクが捉えた芸術の香気はモノラルながら珠玉の音楽。
ぼくが好きなのは、変奏曲の第1楽章。
豊かな感情を解き放つ旋律の展開に
この変奏曲をいつか弾いてみたい(=人生に重ねてみたい)と思いつつも。
K488は、モーツァルトのピアノ協奏曲で華麗さと情感が散りばめられた佳品。
かつて第2楽章の旋律を薬師丸ひろ子が日本語の歌詞をつけて歌っていた記憶がある。
手持ちのなかにもK488を収録したCDは随分持っている。
往年の名盤を置いておく棚は色あせることはないとしても
いまの時代を漂わせた盤を探していた。
そこでこの盤を買ってみた。
音が出た瞬間に違いがわかった。
再生装置を感じない自然さ。
透明度を強調するなどハイファイ調の作為がない。
それなのに音楽がベールをまとわず、スピーカーから離れて鳴り響く。
ピアノは直接音がよく聞き取れるが、ホールの間接音が心地よい。
録音は聴衆のいないホールで取り直しをすることなく一発で行われたのではと想像。
オーケストラで始めるK488は、
弦の主旋律の鮮明さ、対旋律がエコーのように寄り添い
木管がぽっと浮かび上がってそれらが協奏曲となって紡がれていく。
これは指揮者の音楽に寄せる深い愛情があってこそ。
このような伴奏ならピアノが自由に羽ばたける。
細部のパートが浮かび上がる万華鏡と
それが混じり合ってひとつの音楽のうねりとなる。
どこまでがピアノでどこまでがオーケストラなのか。
こんなK488は初めてだ。
個性的な演奏という尖り方ではなく
モーツァルトの音楽の可能性を
こぼれ落ちた花びらを池にそっと浮かべるように
細部にまで心を通わせ
木管は空高く、弦は地を漂い、ピアノは空間をコロンと駆け巡る。
流れる大河のごとく悠然として自然。
この繊細さ、自然さはもしかして日本の風土そのものではないかとさえ思えた。
第三楽章のコーダでは、この高揚感はやはりライブだと気付いた。
(K331の端正な冒頭からは想像もできない)。
この演奏なら、モーツァルトの最後の協奏曲K595が史上最高の演奏になるのでは?と思った。
天国にたどりつきたい魂が奏でる無垢なまでのK595を
田部京子と小林研一郎/日本のオーケストラで聴いてみたいもの。
ジャパニーズウィスキーが世界を魅了したように
西洋の古典音楽の典雅な高みの作品を
日本人の感性で音に編み上げ、日本人演奏家でなければなし得なかった高みに。
その晴れ晴れとした聴き心地。
桜の季節に、桜のごとく舞い降りて煌めくモーツァルト。
SACDとなっているが、通常のCDプレーヤーで再生できる。
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追記
田部京子では、ベートーヴェンのピアノソナタを聴いてみたい。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番、第31番、第32番
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視聴しただけだが、もっと聴きたいと思った。
音の構造が繊細だが凛としている。
作品109が心にしみ入る。
作品110はシューベルトのようにも響くが、そこに音の抑揚の張り詰めた余韻を残す。
作品111では、最後の審判のような凄みと静けさを感じる。
ベートーヴェンのピアノソナタの全集だけでも4セット持っているけれど
このCDは、往年の巨匠の演奏とは異なる価値を創造している。
芸術の香気が漂うけれど
ベートーヴェンの晩年の楽曲から人間のやさしさを感じることができるという意味で。
タグ:モーツァルト
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