なぜユキワリイチゲなのかと自問自答した。
きょうは6年目の3月11日。
春の日射しを浴びてすくっと開いたユキワリイチゲをぼくが見たかった。
そしてそのお裾分けをと思った。
身近な誰かに見せたくて花を撮ることは確かにある。
心のなかでそれを不特定多数に届けよう。
自己満足であっても。
ここは阿讃国境のユキワリイチゲの谷と呼んでいる場所。
四国のユキワリイチゲは白が基調だけれど
この谷は紫を帯びる。
明るく艶やかで花も大きいように思う。
(ミネラル豊富な広葉樹の腐葉土が影響しているのだろうか)
谷に陽が射す午後の数時間だけ開花する。
時期としてはやや早いのだけれど
もう心が行くと決めている。
行くと決めたときから時間は動き出す。
いまはどんな状態かを客観的に見るのではなく、
(そこにレッテルを貼るのではなく)
いまの状況を自分はどう認識して、どのようにしたいか。
運命は自分の意識のなかにあることに気付いたら
停滞している時間が刻みを入れるようになる。
(抽象的だけど)
北に向かって流れる沢がつくる渓相はおだやかだけれど
随所に岩盤を形成する。
数年前に足を滑らせて落下した鹿を見たことがある。
足元を見回しつつ、沢の水音も感じながら遡行する。



斜面に雪が残る一角で開きかけたユキワリイチゲを見た。

森はまだ春の妖精たちの居場所になっていない。
(イチリンソウ、ニリンソウ、ネコノメソウ、フタリシズカなど)
しかし森の恵みに立ち止まる。

ユキワリイチゲは、この三つ葉が目印

斜面に咲いているのを遠めで見る。

岩盤を伝うこの渓谷の顔のような地形。
ぼくはいつもここで立ち止まる。
小さなグランドキャニオン。

まだオネムなの、と瞬きもしとやかな娘。



この日、もっとも艶っぽい娘が現れた。
日陰だけれど、ぱっちりと美形でなまめかしい。

一足先に陽光が差し込める一角で仲の良いユキワリイチゲのペア。

少しずつ沢の東側に光がまわっていく。
そして一足はやいユキワリイチゲの束の間の宴が始まる。
ぼくは耳を澄ませて風の気まぐれの一瞬をついて指先を反応させていく。

日だまりに淡い紫が満面のいのちで輝く。







2017.3.11
ユキワリイチゲの谷、ただいま14時半を過ぎたところ。


陽光は誰にでも降り注いでいる。
そして、6年目を刻んだ。
【追記】
今回は沢の遡行と徒渉があるため装備を軽量化したかったので
たった2つの機材(レンズ)だけ。
・D7200+AF-S Micro 60mm f/2.8G
・X20
特にニコンの再現性の良さが光る。
オリジナルのflat richcolorというプロファイルを使用。
誇張のない忠実度の高い再生でありながら
やわらかい階調のなかに存在感と華やかさを両立させている。
(このしっとり感はフジのX-Transでは出せないかもしれない。ニコンのAPS-Cミラーレスに期待したい)
タグ:ユキワリイチゲ
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