2016年09月13日

まちなかの小さな店から伝わる世界観 「玄玄」の文字に込められた思い 伊予西条にて


まちなかには、さまざまな価値観(店舗)が
暮らし(民家)の間で存在感を放っている。
農業では、単一の作物を大規模でつくるやりかたが
日本には合わないように
商業集積や商店街(場所に寄るが)には収まらない様式があるように思う。
それは、暮らしに寄り添っている、というメッセージ。

ここは、西条市の民家が多い地区。
近くに市役所や商店街もあるが、少し距離は離れている。
ふと通りがかって気になったが通り過ぎた。
仕事の打ち合わせを終えて、また店の前を通りかかった。
Pの文字が眼に止まってクルマを停めた。
(小さくても駐車場はありがたい)

なぜ、立ち止まったか?
店のたたずまいに惹かれたから。
「玄玄」と書かれたのれんが目に止まったから。
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店舗デザイナーによる(ありふれた)和モダンとは違う。
そこは生活空間の趣を残しているが、
演出された「こだわりの空間」を避けている。
その一方で、自然食品にありがちな敷居の高さはない。
そもそも「自然食品」のように
哲学が前面に押し出されたものは広がりにくい。

小さな店内のペンダントの灯りがおもてなし。
漆喰の壁がほんのりと反射してやわらかな光を回す。
DSCF2822-1.jpg
半分区切られた隣は精米室。
おそらく玄米を選別できる色彩選別機を入れられているのだろう。
(うちも毎日自宅で精米して七分づきで食べている)

そのとき、ベビーカーを押した女性が小さな店内に来店された。
「探しているものがありそうだったので」
初めて来店された方のようで
子どもさんの健康を気遣われているのだろうと思った。
DSCF2826-1.jpg

店内には、玄米おむすびと玄米パンがある。
時間が差し迫っていたのでパンを2つ買って、
店主の方と名刺交換をして退店。
(女性のお客様はお買い物の相談があるだろうと察したので)

さらに別件の仕事を終えて徳島へと帰路に就きながら空腹を覚えた。
SAで停めて「プレーン」と書かれたものを食べてみた。
オーブンで外側をしっかり焼くとおいしいと添えられているが
(高温で短時間というニュアンスと受け止めた)
ぼくはそのままで半分だけ食べてみた。
食べる前から風味が伝わってきたから。
そのまま食べたら、じんわりと来るものがあった。

税込160円の胚芽玄米パン(プレーン)から
穀物の甘みと旨味がしみ通るように湧き出している。

帰宅後に半分をかりっと焼いてみた。
香ばしさと食感の両立で万人向きのおいしさである。
けれど、焼かずに食べても
お店の主張が濃厚に感じられる(この甘みのにじみだしがいい)。
DSCF9702-1.jpg

材料を見ると、玄米ごはん、玄米粉、小麦(国産)、イースト、塩、米胚芽とある。
表示とは含有量の多い順に書くルールだが、砂糖が入っていない。
(コンビニの食パンなら、砂糖がもっとも多く含まれているよ)
卵、牛乳、バターが使われていないことで
穀物本来の姿が見えた、ということだろう。

米離れが進むなか、老舗の米屋さんが
玄米に注目し、玄米のおいしさをどのように引き出すかを考えて
おにぎりとパンをつくった。
おにぎりは冷凍であり、パンはアルコールを封入した密閉袋で賞味期限が長い。
(ぼくの購入したパンは、二週間以上先であった。それでも、買ってから早めに食べるのがおいしいだろう)。

かんこめさんを見ていると、小さなお店の取るべき戦略が見えてくる。
・老舗の米屋の専門性を活かし「玄米」をキーワードに素材そのものの安全やおいしさを確保。
・玄米として販売するが、一般の人は玄米を扱い慣れていない(食べ慣れていない、おいしい食べ方がわからない)。
・そこで急速冷凍のおにぎりと玄米パンを開発。しかも賞味期限が長い。
・「玄米」や「自然食」にありがちな哲学的な要素を排除(=敷居の高さ、世界観の押しつけ)
(それでも玄米=健康という連想ゲームは働く)
・誰にでもわかる「おいしさ」で伝えようとした。
・これでご近所に伝わる(地元商圏へのアピール)
・「玄玄」はシンプルなメッセージ。
・賞味期限を長く取れたことで商圏(販売可能日数、家庭内保存日数)が拡大。
・まとめて購入できるので送料のデメリットが薄れてインターネット販売も可能となった。

キーワードは、地元密着と商圏の拡大。
玄米の価値をわかりやすく伝える世界観の構築と、
(玄米が広がらなかった理由を突き止めて解決)
店舗とオンラインの連動。
専門性を磨き上げて強みとしたことが原点である。
(店舗があるから根っこがある。インターネットでは専門性に共感するファンを広く求めることができる)
もちろん、そこには店主の思いがあってこそ。


西条では甲さんでそばをいただくことが定番となっている。
西条そば 甲(きのえ)http://saijosoba-kinoe.com/
DSCF2805s.jpg

玄玄さんも新たな定番となった。
http://genmusu.com/
今度立ち寄る機会を楽しみにしている。
(今度はおにぎりも!)

(フジX20 プロネガスタンダードで撮影)


追記

商店街の衰退は暮らしに寄り添わなくなったから。
そう考えると、徳島市の新町西地区の姿が見えてくる。
非日常のイベントや大規模施設で「集める」のはなく、
日常で人が「集まる」場をどうつくるか。
雑多な個性、尖った個性を受け容れるけれど
品質は水準以上を仲間同士で相互にチェックして確保、
店主のひとりよがりを排除。
(月に1回の定例会または飲み会で)
そうすることで、誰でも来られる場を提供する。
(商業だけに限らないけど)
いまの徳島にそんな場所は一箇所もないでしょう。
思いを持って戦略を実行する方々から学べることは多い。

タグ:愛媛 そば 西条
posted by 平井 吉信 at 12:12| Comment(0) | まちめぐり
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