2016年08月13日

よみがえるキレンゲショウマの谷 剣山


天涯の花、キレンゲショウマ、剣山。
2015年の豪雨でキレンゲショウマの谷が壊滅したとの報道があった。
現場を見に行きたいが、長らく立ち入り禁止となっており、
無事でいて欲しいと願うだけの月日が流れた。
そして2016年7月中旬、
例年よりずいぶん早くキレンゲショウマが咲き始めたと
徳島新聞に掲載された。

とはいえ、8月になっても仕事の都合でなかなか行かれない。
もう盛りは過ぎてしまっただろう。
心残りのまま、この夏を見送るのか?―
この数日間は、険しい顔で夏の入道雲を眺めていた。

ところが、8月上旬のある日、
無理をすれば行けそうな日が一日だけやってきた。
盂蘭盆会の日、ご住職の読経が終わればただちに出かける案である。
登山口にある見ノ越に着くのは午後の太陽が傾いてからとなるが
それでも行かなければと考えた。
キレンゲショウマの無事を確かめるまでは
2016年は幕を閉じることはないと思ったから。
太平洋高気圧が張り出した天気図を眺めていて
夕立は起こらないほうにかけてみたのだ。

時間を短縮したいので
最短距離となる佐那河内〜神山〜木屋平〜コリトリ〜見ノ越の山岳ルートを走る。
(ほとんどの方には高速道路の美馬I.Cが使えてアプローチが短い貞光ルートがおすすめ)

さあ、見ノ越に着いた。
見たことのない花に目を留める。
D7N_0528.jpg

森を楽しみたいのでリフトは使わない。
森にはハガクレツリフネが朝の滴を宿していた。
DSCF8087.jpg

D7N_0532.jpg

リフトの西島駅が見えてきた。
DSCF8095.jpg

ぼくは花火が苦手で(耳が良すぎてこたえるのだ)
近所で花火があると逃げ出したくなるほどで、
行政には、耳の弱者を考慮して音の出ない花火に変更すべき、
赤ちゃんにもやさしいなどと助言したことがある。
(花火こそ色の無限の変化が楽しめるPJMがふさわしい)
でも、シシウドの花火は歓迎だ。
D7N_0562.jpg

D7N_0563.jpg

D7N_0567.jpg

蜂が遊ぶナンゴククガイソウの群落に遭遇
(D7200+70-200mm /4は手持ちでこんなマクロめいた写真が撮れるのでたまらない)
D7N_0553-1.jpg

D7N_0555.jpg

キレンゲショウマの谷への分岐にさしかかる。
DSCF8305-1.jpg

直進して山頂をめざさずに、ここから東へトラバース。
D7N_0579.jpg

カニコウモリの群落が続く。
D7N_0543.jpg

その合間にシコクフウロが点在するお花畑
D7N_0549.jpg

D7N_0761.jpg

DSCF8167-1.jpg

かれんなヒメフウロの群生地を通り過ぎる。
全国でも剣山にしか見られない稀少な花という。
DSCF8129-1.jpg

DSCF8136-1.jpg

DSCF8181-1.jpg

ところが、今年は草丈が50〜60センチもあるヒメフウロが群生する。
DSCF8178-1.jpg

シシウドではなく、ツルギハナウド
(人のかたちをしている花びらに注目)
DSCF8226.jpg

D7N_0735.jpg

トリカブトのつぼみが美しい
(もしかしたらレイジンソウかもしれないが、よく似ていて区別がつかない)
DSCF8289-1.jpg

D7N_0745.jpg

ソバナとシコクフウロが咲く花畑で足が止まる
D7N_0583.jpg

DSCF8239.jpg

しばらくトラバース道を行く。
DSCF8168.jpg

谷を下るにつれてギンバイソウが多く見られるようになる
D7N_0598.jpg

テンニンソウにとまる蝶
D7N_0593.jpg

2015年の崩壊地に出た。
谷へ降りる歩道があつらえられていた。
DSCF8171.jpg

DSCF8173.jpg


キレンゲショウマ、と思ったら
同じ色の黄色の花が咲いていた。
葉の下に隠れるように花がぶら下がるという
手の込んだ造形。
これは虫に見つかりにくいかもしれず
どんな意味があるだろう。
キツリフネという。
DSCF8190-1.jpg

この黄色はオタカラコウ
D7N_0700.jpg

谷をさらに下ると、今年も咲いていた。
ここは被害が大きかった南部の自生地だが
むしろ花の数は例年より多いように感じられる。
「増えている!」と興奮して言葉に出る。

キレンゲショウマの谷。
DSCF8217.jpg

D7N_0659.jpg

フジX-E2+XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS、XF35mmF1.4 R
DSCF8198-1.jpg

DSCF8212-1.jpg

DSCF8208-1.jpg

DSCF8245-1.jpg

DSCF8249-1.jpg

DSCF8250-1.jpg

DSCF8257-1.jpg

DSCF8264-1.jpg

DSCF8292-1.jpg

DSCF8281-1.jpg

ニコンD7200+AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
D7N_0607.jpg

D7N_0620.jpg

D7N_0623.jpg

D7N_0636.jpg

D7N_0670.jpg

D7N_0704.jpg

D7N_0724.jpg

キレンゲショウマの谷には誰もいない。
(都会の山野草と山が好きな人には信じられない静寂な時間)
じっくりと1時間ばかり眺める。
終盤になって30人程度のパーティがやってきたのには驚いたけど。


森を抜けるとそこには…
DSCF8301.jpg

典型的な夏の雲。
DSCF8303-1.jpg
ときどき雷鳴が聞こえる。
途中でぱらぱらと落ちたこともあったが
これが夕立に発展しないのが今年の夏の剣山の気象。
(でも、山頂をめざすとリスクはあると判断して一目散に降りる)


帰りは祖谷川源流を経由する。高低差が少なく涼しい。
森の表情になごむ。
DSCF8315.jpg

DSCF8329-1.jpg

D7N_0790.jpg

D7N_0779.jpg

DSCF8336.jpg



山頂まで行くことはできなくても
ジロウギュウや一ノ森まで行けなくても
大剣神社の名水が汲めなくても
剣山はキレンゲショウマの谷に遊んだ。

山の日にはさらに多くの人が訪れるだろう。
2016年8月6日、剣山にて
posted by 平井 吉信 at 21:57| Comment(0) | 山、川、海、山野草
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: