2016年07月03日

しんしんと山気が迫る夏 日和佐町北河内の里山はさらにさらに


ある日、ふと迷い込んだ田舎で
どこか懐かしいような、
心がざわつくような、それでいて嫌な感じはしない、
そんな場所で繰り広げられる物語―。

夏が来るとどこかでそんな場面が思い出される。
それらは、探偵モノであったり、昔の人の知恵に諭される若者であったり、
ときにはSFであったり、亡き友人の思い出をたどる成長記であったり。
(参考)あの花

決して観光地ではないし、地元の人ですらほとんど行かない。
地図には載っているけれど、まるで空気のような場所。
そんな場所に行ってみたい人のための記事です。

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場所は、日和佐町北河内(きたがわち)の大戸(おおど)と久望(くも)の集落である。

国道55号線に自動車道(無料)が併走されるようになり
大戸地区を経由するかつての道は通行車両が激減した。
この地区には円形の棚田や、かつての小学校跡に生える見事なイチョウなど
里山好きにはみどころがいっぱい。
伝説の後世山探検隊を送り出したのはやはり大戸地区だった。
さらに、久望(くも)の集落の奥には「赤滝」と呼ばれる滝がある。
ただし、観光地ではないのでクルマを置けるところは限られている。
道幅は想像以上に狭い。
車幅が1.8メートルを超えると気を使う箇所が数カ所ある。
夏になれば(ここに限らず)スズメバチ、
さらにはマムシ、ヤマカガシなどの毒蛇も少なくない。
(車道を歩く限りはほとんど心配はない。スズメバチを刺激する黒い服を着ていかないことぐらい)

まずは大戸から。
集落の道沿いに日和佐川最大の支流北河内谷川が流れ
そのままたどると星越峠に達する。
集落の入口には神社があり、広い境内にクルマを止める。
新田神社という集落の氏神様である。

フジクロームを詰めたライツミノルタCLに40oを付けて
よくここへ来てはシャッターを押していた。
(チャッ。短く歯切れの良いシャッター音で)
(その前に使っていたミノルタハイマチックFも近似の38oだったので、いまでも40oの画角が好きなのだが、この画角の良いレンズは現代に見当たらない)
光と影、水と河畔林、集落の田畑と氏神様の彩なす光景に引かれたのだ。
(そのときに撮影した写真はいまも自室に飾ってある)

だから、このブログで一度も大戸地区を紹介していないことが意外だった。


ここで、日本の里山や田舎が似合うと思うポップスをご紹介。

センティメンタル・シティ・ロマンス「夏の日の思い出」
…1曲目の「想い出のリフレイン」が鳴り出すと、せみしぐれとともに野山をかけた子ども時代が蘇る。夏の叙情とその切なさを歌い上げたシティポップス。しんしんと夏が迫る音楽はそう多くない。2013年にSHM-CDでリマスター復刻された1986年のアルバムだが、枚数が少なく入手が難しい。
(ぼくはアナログで持っている)
夏の日の想い出


松岡直也「夏の旅」
…日傘の貴婦人、 田園詩、 夏の旅と定番の流れ。ジャケットの写真は信州かどこかの田舎道(舗装していない)の停留所で、日傘を差した和服の女性が降りたばかりのバスを見送る後ろ姿が印象的なジャケット。時代背景からして車掌が乗っている路線バスなのだろう。路線バスは田舎の効果的な記号として使われることが多い。トトロもそうだった。母親に手をひかれて停留所から2キロ少々の土手を歩き、夏祭りのお宮の前を通り抜けて田舎のおじさんの家をめざしたことを昨日のように思い出す。2014年4月にお亡くなりになられたのでCDの入手はそろそろ注意したほうが。いまの日本のCD流通は手に入るときに無理して購入しておかないと後悔する。

夏の旅


ハニー&ビーボーイズ「バック・トゥ・フリスコ」
ドライブ感のある1曲目で「夢の先まで行っても…」の歌い出しでこのアルバムの世界観に入っていく。このバンドは、1987年に、西司、村田和人、山本圭右、平松愛理で結成されたもの。良質のポップスとはこんなものの見本のようなアルバムだった。2曲目は平松絵里が歌う。名曲「雨はてのひらにいっぱい」がラストを締めくくる。なぜこのアルバムが長い間、復刻されないのか不思議だ。
バック・トゥ・フリスコ

シングル曲なのだけど、小椋佳「夏ひとかけら」。しーんと迫る夏の気配と去って行く足音のような世界観を日本の情緒を大切にした詩と曲で綴る佳曲。収録アルバムのひとつ。
コンプリート・シングル・コレクション 1971~1976


ライツミノルタCLの代わりに、現代のデジカメ(フジX-E2+XF35mmF1.4)を持って
久しぶりに大戸集落の入口の新田神社に向かう。

鳥居の注連縄が新丁されているようだ。
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この建物、ていねいにつくられている。
山裾の緑が壁に反映されている。
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壁を引き出すと据わることができる一種のミセづくりなのだろうか。
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苔むした一本の樹木、それに建物の背後の森
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日和佐川支流の北河内谷川は澄んでいる。
2人組の地元の男性が手に持つ網でアユを採っていた。
日和佐川には内水面漁協は存在せず放流はされていない。
アユもアメゴも天然モノだけだ。
日和佐川にはダムがないので海と源流を自由に行き来できる。
だから、ウナギ、モクズガニ、テナガエビも多いはず。
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小さな石積みがあって、そこから上手には河畔林が覆い被さって
光と影と木々の葉を映す水の表情が美しい。
まさに1分ごとに変わっていく水の表情を捉えたのは
俊敏なライツミノルタだったのだ。
ただし露出は難しかった。
スポット測光だったし暗部がすとんと落ちるリバーサルでもあったので。

フジX-E2+XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS
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ニコンD7000+AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
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河畔にはヤブカンゾウの花が咲いている。
若芽は食べられるというが、
飽食の時代に、少なくなりつつある山野草を食べる必然性は見出せない。
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シオカラトンボと紫陽花。よく見ると複眼の中心がこちらを見ている。
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どこにでもいるカラスアゲハのようだ。
ニコンは迅速なAFを活かして望遠専用にしている。
(もっともD7000に100%満足しているわけではないけれど)
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北河内谷川から久望(くも)方面へと向かう道すがらにはねむの木が点在する。
支流を背景に一瞬風がおさまった瞬間にかけてみた。
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水路を見てメダカを探すが、流れが早く水も澄みすぎているので生息に適していないのだろう。

水路に落ちたミミズ(約1尺)が流されながらも足がかりを辿って這い上がろうとしている。
青いワンポイントの帯が印象的。
大きなものは50センチぐらいになるだろうからまだまだ小型だ。
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北河内の集落はかつてと比べて人が減少して空き家が増えているように感じる。
棚田も耕作放棄されて荒れ地となっている枚数が増えている。
野生の鹿や猪は増えているだろうし、
人口減少時代には生息地が少なくなった野生動物が
人のいなくなった里山を支配する時代がそこまで来ているように感じる。
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人口増加時代と人口減少時代は政策を大転換すべきだが、
現政権は真逆をめざしているようで
格差是正、内需拡大、中小零細の事業所を中心に生産性を高める戦略がとれないでいる。
崩れそうな崖、耕作放棄された荒れ地、朽ちた廃屋、濃厚な野生動物の気配を
たったひとりで歩いて感じてみれば、いまの中山間地域の現状が感じられるはず。

秘境赤滝まで1.8kmと出ている。
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20代の頃、仲間を集めて後世山探検隊を送り出した。
この大戸の集落から悲運の姫が眠る後世山をめざすというもので
(地元の人も年に2回の例祭以外は怖がって山に近づかないといわれていた)
後世山へはたどりつけなかったが、幻の赤滝を発見した。
実は、「こっちへ来い」とばかりに、
赤滝まで誘導してくれた3匹の犬がいる。
地元民家が飼っていたエス、ケープ、ゴマという名の犬たちは
もうとっくにいないだろうけれど、その子孫はいるだろうか?

川は小さくなってきたが、野生はますます濃厚になってくる
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開けた地形で民家があった。桃源郷のような暮らしをされているのではないか。
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あと1.5km
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同色が重なると鮮やかに見えるという色彩効果の風景
(だから温州みかんはオレンジのネットに入って売られている)
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右手に崖、左手に沢の昼でも暗く細い道。渓流沿いにガードレールはない。
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いよいよ里山の終点が見えてきた。
ここから遠くの地形からうかがえる谷筋を登っていく。
幻の赤滝はその先にあるのだ。
(幻の赤滝はどんな滝でしょうか? 興味のある人は続きを完結させてください)
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夏の山気が迫る里山は国道が離れ、集落の人口が減少したことで
さらにしんしんと静けさが深まっていた。
日本の将来に思いをはせて一抹の寂しさがさらさらとそよいだ一日だった。
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posted by 平井 吉信 at 22:26| Comment(0) | 徳島
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