2015年10月10日

ノーベル賞から思うこと


この川はどこから流れてくるんだろう―。
そんな疑問がわき起こる。
小学生の足で可能なまで遡っていく。
川沿いに道がなくなれば回り道をして
やがて川と出会うことを知る。

幼い頃、泳いで遊んだ川がある。
父に連れられて上流へ、
さらに源流へと足を向けたことがあった。
すると、ひとまたぎできそうな流れになった。
あの川がこんな姿に―。
心がふるえる一瞬だった。

それ以来、
なぜなんだろう、の問いかけをいつも追いかけている。

小学校低学年の頃には
日本地図と世界地図が手ですらすらと描けるようになっていた。
どの県がどこにあるかや、どの国がどこにあるか、
アリススプリングスやベルホヤンスクといった地名すら知っていた。


地図を見るのが好きで
まちなかに二軒あった地元の本屋に行って見比べ地図を買った。
和楽路屋(ワラヂヤ)から出されていた分県版の徳島県は
多色刷りの色合いが美しく、
実用の道具でありながら、地図に神秘や美術の感性を感じた。
この地図はぼくの原点として今も手元にある(当時100円)。
何度も何度も見たので
すり切れてテープで貼っている。
書き込みも随所にあり、子どもの心の動きが刻まれている。
DSXE4634.jpg

いま思えば作り手の思いが籠もっていたのだろう。
その当時から、モノとそこに込められた思いを感じていたので
小学校で使っていたものでも、これは!と思ったものは
大切に使っている。
DSXE4632.jpg

ところが、いつ頃からか和楽路屋の地図を書店で見かけなくなった。
調べると、2002年に自己破産の申し立てをしていた。
アナログからデジタルへの過渡期、
時代の潮流に飲み込まれたのかもしれないが
専門分野で光る個性を持った惜しい企業であった。
(美品があれば入手したいけれど、時間のない人間がオークションサイトは見られない。キーワードから出品を知らせてくれるような便利機能があれば良いのだけれど)

それから国土地理院の5万分の1,2万5千分の1地形図を集め出した。
長い年月で地図の更新がなされることも度々だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

地図好きと川好きから、山好きになるのも当然だった。
はじめて山らしい山へ連れて行ったのが高知大のワンゲル部にいた親友。
高知県の奥物部の渓谷から入る四国の山のすべてが詰まっているあのルート。
三嶺(さんれい)の南斜面のルート(三嶺〜西熊〜天狗塚)である。
8時間ぐらいかかったけれど
もののけ姫の森ではしゃぎながら
スニーカーで駆け抜けた、あっという間の体験だった。

さらに、植物を育てるのが好きな子どもだったので
大人になって山野草(というか生態系)を見るようになるのも当然だった。

なお、地図好きはさらにご縁を生む。
山が好きな人なら誰でも知っている
パソコンの地図閲覧ソフトとしてオンリーワンの地位を築いている
「カシミール3D」(山旅倶楽部)の開発者の日比光則さんから
2005年にお電話をいただいた。
(空と海のWebサイトがきっかけとなってご質問をいただいた)
日比さんはその後、ご縁があって海陽町宍喰に住まわれるようになった。
(東京から本社を移転され、寒茶を始め地域の特産品の販売にご尽力されている)
経営されているカフェ「Channel R55」でお話を聞かせていただくことを
いまも楽しみにしている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中学の頃から星の世界に興味を持った。
はじめて買ってもらった望遠鏡は6センチの屈折経緯台であった。
しかし、知識がついてくると、物足りなくなったので
いまも現役のタカハシ製作所10センチ反射赤道儀を買ってもらった。

星のことを知ろうとすると、天文や天体写真といった現在の事象だけでなく
その起源や成り立ち、法則などの理論、いわゆる物理が視野に入ってくる。
高校へ行く頃には、天文学や天体物理学が好きになり、
天文学者になることを夢見てこれらの本ばかり読んでいた。
高校を卒業する頃には、学年の400人中380番という成績であったが、
試験で学年1位を取った科目が複数あった。
かっこよくいえば、受験というつまらない動機よりも、
真理を探究したいという思いが優った。
(視線を高く持つことでものごとの本質が見えてくるとともに、達観して捕われずに生きていくことができる)
DSXE5526.jpg

真実の探求が愉しみであることから
問題発見と解決を行いつつ、
それを自分以外の人が解決に至るよう
サポートすることが現在の仕事となっている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中学の頃、海外の短波放送を受信することがブームとなった。
スカイセンサー、クーガーといったBCLラジオが花開いた時期である。
ぼくにはそのような兵器はなかったが、
短波が受信できる3バンドのビクターのラジオで
海外放送を聞いていた。
塾に行ったこともなければ、大学に行ってもいないけど、
YouTubeや衛星放送の英語コンテンツが理解できるのは
中学で受けた少人数による英才教育(LL教室があった)と
耳から入った言語が右脳と左脳へとかけはしを渡せたからだろうと思う。

音楽については生涯の友となっている。
20代はベートーヴェンに傾倒した。
この世界でもっとも理解しているぐらい魂を込めて音楽と向き合った。
(いまもBGMとして音楽と接することはない。聞くときは向かい合う)
独学で指揮者をねざそうと数年間勉強したこともある。

隣の部屋で聞いていても
わずかな音の違いが判別できる。
(人がわからない差がわかるので耳が良いと気付いた)
耳を大切にするため、ヘッドフォンはしないし
ステレオ装置はもとより、テレビやラジオでの再生音量も極端に小さい。
(いまだに15インチのブラウン管テレビを使っている。我慢しているのではなくそれで十分だから)

匂いについてもそう。
感覚を大切にするため、煙草は1本も吸ったことがない。
(生涯吸わないと決めている。敏感であれば生命の維持に有利になるだろう。ここにはマムシがいるとか)
視覚については、パソコン作業を軽減するため
高価なフィルターを付けて紫外線領域をカットしていたが
さらにブルーライトカットのグラスをして作業を行っている。
五感はこの世界を愉しむために不可欠であり、
それゆえに大切にしなければと思う。
10代の頃、百歳まで生きる、
それも充実して生きることを決意したときから
ぶれることなく信念を貫いている。

種としての人類が今後どこに行くのかを学ぶため、
生命の進化、生態系、考古学、民俗学、社会学、心理学などを学んできた。
(仕事にも関心のある分野にもわくわく感でやっていると、睡眠時間が4時間になるのだ)
社会人文的には人を育てること、組織として動きを高めることに関心がある。
個を高めることは組織力を高めることにつながるが、
高めた個を活かせる組織のあり方が必要となる。
そのことであちこちの企業で
その企業の実情に応じてカスタマイズしたカリキュラムで実践しているところ。

日本人のノーベル賞受賞が続いている。
ハヤブサの帰還もそうだが、
日本の精神が世界に範を示せる分野は多い。
世界を変えていけるのは
力学(カネ、イデオロギー、権力など)を離れたところにあると考える。
自国びいきという理由でなく、それらを広める義務があるのではとも思う。
神仏習合の経験からも柔軟に受け容れることが日本人の強さでもある。


基礎研究などは実用性がないと受賞者は謙遜されるが、
種としての多様性に乏しいホモ・サピエンスが
大所高所、俯瞰的に視点を持つことができなければ
そう遠くない時期に滅び去る。
宇宙の起源に思いをはせることは
今日に至る生命40億年の進化と
それを育んだ背景に目を向けることになる。

どうでもいいことで争っているのに、
大切な本質に気付くことができない。
(その極致が現政権)

地域振興券やそのほか多くの補助金をやめて
政策発動のもとで甘い汁を吸う利権とその貫流構造を断ち切り
思いと知見を持った人材が社会を動かす流れに参画できるようになれば
この国はもっと良くなり、世界の範になれる。
カネと権力が集中する政治や行政はその内部に腐敗構造を持つ。
イデオロギーありきも邪魔になる。
右も左も弊害があるという点で同じに見える。
厳格化したルールが少数の良識ある人々の行動を縛ったり
国民にしわ寄せが来る。
独裁政治家のもと、政党政治はもはや機能していないし
行政にも自浄作用は期待できない以上、
良識ある国民が地域の運営にかかわるしくみをつくり
その連合体としての国家をまとめていくやりかたが良いのではないだろうか。

例えば、
科学、哲学、宗教など分野を問わず、世の中を俯瞰する人々の知見を集まる。
(おそらく一定の方向に収斂すると思う)
逆に、多方面の現場で起きている問題に日々向き合っている人々の実践報告を集め
そこから課題を抽出する。
両アプローチを突きつければ、日本や世界が進むべき道が見えてくるのではないか。
そこに到達するには政党、左派右派などのレッテルは無用となる。

行政でいえば、地域が地域の課題を自ら解決する。
それをサポートする中央政府という姿が見えてくる。
現場(地域)主導の改革がなしえるかどうかが
日本の未来を決めることになる。
そのための覚悟と熱意が地域にも中央にもあるかどうか。

科学も哲学も宗教も究極は同じ山を別々の角度からめざしている。
源流から、高いところから、多様な視点を持って社会を見つめること。
社会に役立つかどうかではない科学の位置がある。
ノーベル賞の受賞はそのことを教えてくれる。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: