2015年07月13日

「かさね」という言葉 ― かさねとは八重撫子の名なるべし ―


この春に「紫の上かさね」と名付けた山野草のことを書いた。
http://soratoumi2.sblo.jp/article/118377747.html

希少種ではないかと自生地を明らかにしなかったが、
その後、勝浦川沿いの堤防に至るところに生えていることがわかった。
その名前はクサフジという。

そのとき浮かんだのは、
芭蕉が「おくのほそ道」を綴ったなかで
那須野を訪れた際に弟子の曾良が詠んだこの句。

かさねとは八重撫子の名なるべし
 

馬をひくおかっぱの童女の名前が
「かさね」という鄙にはまれな名前であったことに着想したもの。

「おくのほそ道」は推敲された紀行文学だけれど
それでいて飄々とした一筆書きの潔さがある。
空間に響かせたときの余韻がいい。
(音の情景を楽しむともいえる)

「おくのほそ道」は学生時代に授業で習っているはずだけれど
いまのあなたの年齢で振り返ったとき、どんな世界観を感じるだろうか。
とはいえ、古典をひもとくには気が重いという方、
Kindleならこの解説本がいいだろう。
(リンク先は電子書籍)
おくのほそ道(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典<ビギナーズ・クラシックス 日本の古典> (角川ソフィア文庫)<ビギナーズ・クラシックス 日本の古典> (角川ソフィア文庫)

(紙書籍はこちら)
おくのほそ道(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)


東日本大震災をきっかけに日本国籍を取得されたドナルド・キーンさんは
「おくのほそ道」の世界を英訳で紹介している。
宮田雅之さんの切り絵が句ごとに挿入され
午後の紅茶を飲みながら読み返した名著。
「かさね」の句には次の英訳を施している。

Double--that must be
The name somebody gave to
A double-petalled pink.


全編を通してキーンさんが綴る
夢のような余韻を楽しめる本である。
この本は一句ごとに挿入されたカラーの挿絵を楽しみたく
めくりつつ出会いを楽しめるので
Kindleで買う選択肢はない。
(リンク先は紙書籍だが、入手は難しいかもしれない)
対訳 おくのほそ道 (Illustrated Japanese Classics)

クサフジという名のありふれた山野草だが
那須野にいた童女を思わせる素朴でありながら
遠くは万葉のあずまうたに通じる世界がある。
源氏物語への遡及は無理があるかもしれないが
京都に生まれたら優美な姫になれたかもしれないと
「紫の上かさね」と名付けたもの。
DSCF5732-1.jpg

仕事は多忙をきわめていても
ほんの10分だけ、ネットサーフィンの手を休めて
遠い時代の旅を胸にあたためることができれば
それはまたそれで生きる力になるのではないか。
(仕事の合間にこれだけのブログを更新しながら頭は仕事の着想を得ようとしている)
タグ:勝浦川
posted by 平井 吉信 at 11:28| Comment(0) | 生きる
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