氷河期にわたってきたのは生き物だけではない。
植物もそうである。
ただし、移動できる動物と違って
植物は自らの意思で動くことはできない。
その後、氷河が後退して温帯地方の高山に生き残っているのが
ツマトリソウではないだろうか。
→ 愛妻家の憧れ、ツマトリソウ 一ノ森で
四国では、石鎚山系と剣山系の
標高1800メートル以上に自生しているように見受けられる。
特に瓶ケ森が比較的見やすいのではないだろうか。
剣山では、一ノ森から次郎笈までの稜線で梅雨の時期に見られる。
剣山の魅力は、リフトから最短距離を登って降りただけではわからない。
山相、地形、植生、雰囲気が東西南北の斜面で異なるからである。
見ノ越登山口からリフトを使わずに上がる。
湿度の高い森の斜面を、キノコ類を眺めながら
涼しくも息弾ませて登っていく魅力。
これが(1)の魅力。
ギンリョウソウ。

リフトがちらちら見える

次に、西島に出て笹原が広がり、山頂が見える。
人の心に一服のそよ風が渡っていく。
これが(2)の魅力。

そのまま直登せずに、刀掛の松から東へ辿って
穴吹川の源流が刻む剣山の北斜面をなでるように
一ノ森に向かう。
ここは、剣山でもっとも植生が豊かな場所。
キレンゲショウマもここだけにしかない。
山岳信仰の修行の場を眺めながらの息つく間もない。
これが(3)の魅力。

ヒメフウロというかれんな山野草

小さなセンサーのフジX20の広角マクロでなければこの写真は撮れない


森の空気を沈める谷へ

沢を横切る清涼感



四国一の清流、穴吹川の源流の沢

白い山野草、ハタザオか? ミヤマハコベも至るところに

霧の尾根筋が幻想的

オオヤマレンゲを望遠レンズで引き寄せる

ところどころざれているが、危険なほどではない

一ノ森から南斜面の白骨林を眺めつつ、
剣山へと登り返し、次郎笈へと稜線の縦走。
これが(4)の魅力。

なかでもツマトリソウはひっそりと

純白と楚々とまとう

見逃しそうな小さな存在

こちらが寄っていく際に
ツマトリソウを怯えさせないよう
笑顔で静かに寄っていく、そして話しかける。
もちろん愛でる言葉で。
それから撮影にかかる。
でも、山野草に心があるなら、こう思うだろう。
魅力に気付いてくれてありがとう、
自分も人間もちっぽけな存在だけど、
一期一会を感謝しよう。
(これが山野草マニアの盗掘だと山野草も別のエネルギーを感じるはず)
だから、接し方が大切。
アザミに近寄ってみる


ツマトリソウのなかに、桃色に縁取られた個体がある
そのあでやかさ、小さきゆえに




ほかにも縁取りを持つ白い花がある

霧が北から南へと駆け抜ける


剣山も一ノ森も山頂直下にヒュッテがあり
御来光を楽しめる。
これが(5)の魅力。
次郎笈峠(次郎笈と剣山の鞍部)からは
石灰岩質の開けた斜面を西島へ戻る。
途中の名水やパワースポットを味わいつつ
高低差の少ない明るい森を散策。
これが(6)の魅力。




黄色い絨毯に包まれる登山道

ヒメレンゲの群落が目にスクリーンを広げる
小さなセンサーのX20で近寄る


祖谷川源流へ回り道をするもよし、
リフトでガイド音声を聞きながら森を眼下に眺めるも良し。
霧の出てきた森を見ノ越めざして来た道を下るも良し。
それぞれの帰路で剣山を振り返る。
これが(7)の魅力。

四季の移ろいと、1週間で顔ぶれが変わることもある山野草、
雲の流れ、木々の表情、霧がかる森の木霊を感じつつ
剣山を堪能してみては?
(1)〜(7)のルートは
山に慣れない人には足への負荷が大きいので
まずは短いルートを何回か試して
ある程度、剣山を庭のように感じられたら挑戦したらいい。
(山好きの人なら上記のコースはちょうどいいだろう)
山へ行くと疲れるから日曜日は行きたくない、
という人がいるかもしれないが、
逆に疲れを取るために多少無理をしてでも山へ行く
という考え方はどうだろう。
身体の深いところの疲れが抜けて
心身とも緩めることができるはずである。
この癒し効果は何物にも代えがたい。
筋肉疲労もまったく残らない。
そんな登山の効用を科学で解明したのが
「ためしてガッテン」のまとめ。
http://www9.nhk.or.jp/gatten/pdf/program/P20100714.pdf
山から戻ると体調が改善されて、
また、新たな一日に最善を尽くしてみようと思える。
剣山はそのための最高の場所。
追記 ストックの使い方について
四国の山では2本ストックは邪魔ではないだろうか。
すれ違うときに気を遣うし、
鹿よけを越えるときや足元の悪い場所では邪魔。
少なくとも片手は空けておきたいので
ぼくは1本ストック(T字)を使っている。
登りで体重をかけて推進力とすることもできるし
下りでは体重と重力を分散させつつ
羽毛のようなタッチで使う。
これは言葉では伝えにくいけれど
手首や腕の力を抜いて勝手にストックが着地したのを
重心が追いかけるように追随させる。
ぶれない体幹をしなやかに保ちながら、
着地の力を身体の柔軟性で吸収する。
ノルディック歩行を見ていると、
下半身の負荷が減る一方で
地面からの反発を上半身が受けて
下半身の動きとの相克が生じて
身体に負荷がかかるイメージがあるがどうだろうか?
(ナンバ歩きを会得している人には特にそう見えるのでは?)
1本ストックで前傾姿勢を保ちつつ、
(左右の持ち手を変えつつ)
一瞬一瞬の3点支持を連続させる意識で
リズミカルに下る方法もあると思う。
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