重なり合った2つの系のどちらを観測するか―。
つまり、意識の存在が浮かび上がる。
月は地球の生命にとって
特別な存在である。
人はあの月をどのように認識しているのか?
煌々と照る月を見ると「シュレーディンガーの猫」が思い出される。
今宵の月は皆既月食。
しらさぎ大橋を歩いて眺める吉野川河口干潟。
昼間の雲ひとつない東の空にどこまでも抜けていく。
あと数時間で始まる天候を祝福しているようだ。

それから数時間後。
きょうは夕方に仕事を入れていない。
ベランダにタカハシの10センチ反射赤道儀を出して
オルソ40oアイピース(×25)を装着。
これにフジX20を手持ちコリメート法で撮影する。
さらにジッツオ3型にニコンD7000+AF-S 70-200mm f/4G ED VRで
望遠レンズからも月食を追いかけようとするもの。
18時44分

18時57分

(薄雲に月影が反映されている。レンズのゴーストではない)
快晴の東の空で月は欠け始めた。
ところが月食が進むにつれて雲が増えていき
皆既に入るとやがて雲間に埋没してしまった。
19時4分

皆既が始まると赤銅色の主人公の傍らで
倍率25倍の視野に粒のような恒星が見えてくる。
宇宙空間にぽっかりと浮かぶ月の刹那、
心が静まり、星夜と同調する。
それを見る人間も人生の刹那。
19時33分

19時43分

かろうじて雲のわずかな切れ目から
赤銅色の皆既月食をちらりと垣間見たものの
その後は待てども雲の扉は開くことはない。
ついに皆既の時間は終わった。
望遠鏡や三脚をたたんだ。
けれど、皆既が終わって
月面の半分程度が復元したところで
空が晴れてきた。
(そういうもの)
部屋に戻って
ドビュッシーのベルガマスク組曲から紡がれる
月の光を浴びる。
サンソン・フランソワ、ベロフ、あるいは小川典子で。
http://www.youtube.com/watch?v=xbvJm-irunw
石清水からこぼれ落ちるように所在なく弾かれた小さな音が
夜の静寂を跳ねる錯乱する音の跳躍となる。
きょうの気まぐれな天気のような
天才フランソワのピアノで聴きたい。
ドビュッシー:ピアノ名曲集
太陽系の惑星と衛星の関係でいえば
月は地球の大きさに比べて相対的に大きい。
地球の分身に落とす影を魅せてくれる皆既月食は
光と影のあやなすできごと。
燦々と光を降り注ぐ月を見上げる。
玄武岩の塊とわかっていても
なんだか、なつかしい感じ。
この先、何度か遭遇する皆既月食の一期一会に
あの不思議な猫が舞い降りる。
生きているのか死んでいるのか。
それともそれが重なり合っているのか。
あの物理学が考案したネコのように。
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