皆既月食を前に太陽系天体に思いを馳せている。
138億年前、インフレーションからビッグバンを経て
突然宇宙の時空が開かれた。
(現在の物理学はその誕生の瞬間にまで迫ろうとしている。量子論と重力理論の統一を果たそうと試みるのが超弦理論)
誕生直後の宇宙は
右も左も重力も電磁気力の区別もない完全な対称の世界だったが、
それが「自発的対称性の破れ」で物質が誕生するきっかけとなる。
いったん対称性が破れるとそこは濃淡を生じ、
やがて無数の銀河を生み、ときに衝突したり惹きつけあって
銀河団という大きな構造を形成する。
無数に生まれた銀河の辺境で
表面温度6千度のG型スペクトルを持つ恒星として
50億年前に輝きだした太陽。
原始の太陽が惹きつけたガスが集まって濃淡をつくり
惑星の原型となる核天体が誕生する。
こうして46億年前に原始地球が誕生する。
誕生後の地球は、
小さな惑星が数回衝突してそのたびに成長していく。
月は衝突の際にちぎれた地球の一部と考えられ、
以後は潮汐力を及ぼすことで地球の生命の誕生に深く関わることになる。
そう、生命は身体と精神の内なる要素に海を持っている。
こうして太陽系内には、
水星、金星、地球、火星(以上、内惑星=地球型惑星)、
木星、天王星、海王星、冥王星(以上、外惑星=木星・天王星型惑星)が存在する。
→ JAXAの太陽系
それぞれに星は固有の性質、エネルギー、気ともいうべき個性を持っている。
個人の生まれた日時に、太陽、惑星、恒星との関係性を見るのが占星術である。
ぼくは12月のとある日の
太陽が昇る6時6分に生まれたので
太陽と射手座(銀河系の中心)が重なる時刻に生まれている。
(射手座の彼方からの強い光を感じることがある)
そして木星の守護を受けつつ、火星の魂を受けついでいる。
群れるのを好まず、現実社会を飛翔して
いつも知性と快楽を求めつつ高い空を駆けていく。
ベートーヴェンへの共感もそのため。
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1990年代を代表するアニメ作品といえば、美少女戦士セーラームーン。
それぞれの星を司る戦士が登場する。
(戦士に変身する前の日本語の名前がいい)
セーラームーンがプリンセスとして覚醒するとき
月野うさぎのおちゃらけの日常から離脱して
歓びや哀しみを超越した表情で凛とたたずむ。
仏教的な諦念や解脱を感じる場面である。
知の狩人マーキュリーの可憐な分析者としての佇まい、
ヴィーナスの天衣無縫な明るさと色彩の幸福感は主人公以上、
闘いの神マーズの正義感や祈り、
小惑星帯からの使者と思われるファイター、メイカー、ヒーラー、
太陽になれなかった巨大な惑星ジュピターのまばゆい輝き、
サターンの深淵を垣間見させる純真、
ウラヌス、ネプチューンの快活と神秘の表裏の関係、
(↑ どちらも声優が抜群にうまい)
死を司るプルートの研ぎ澄まされた美しさなど
(冥王星は、惑星ではなく準惑星との説もあるが、ぼくは惑星と感じる)
太陽系の個性がうまく描かれている。
この作品は、星の世界の神秘と
純粋、愛、友情が結わえられた世界観を提示している。
(子ども向けアニメであるが音楽が効果的に使われている。大人が本気で夢中にやらないと子どもを感動させることはできない)
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さて、現代のオーケストラ作品で
名のある指揮者がレコーディングするのが
ホルストの組曲「惑星」。
年配の方には水野晴郎の水曜ロードショーのエンディングで流れていた
(「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」)
木星の雄大でなつかしい旋律を思い出すだろう。
第1曲:火星 - 戦争の神
Mars, the Bringer of War. Allegro
第2曲:金星 - 平和の神
Venus, the Bringer of Peace. Adagio - Andante - Animato - Tempo I
第3曲:水星 - 翼のある使いの神
Mercury, the Winged Messenger. Vivace
第4曲:木星 - 快楽の神
upiter, the Bringer of Jollity. Allegro giocoso - Andante maestoso - Tempo I - Lento maestoso - Presto
第5曲:土星 - 老年の神
Saturn, the Bringer of Old Age. Adagio - Andante
第6曲:天王星 - 魔術の神
Uranus, Magician. Allegro - Lento - Allegro - Largo
第7曲:海王星 - 神秘の神
Neptune, the Mystic. Andante - Allegretto
(「総選挙」でもっとも高い得票を得るのはどの楽曲だろう?)
この作品には冥王星が含まれていない。作曲当時は発見されていなかったからである。
それはともかく、このところ、惑星を寝ながら浸る毎日である。
聴くのは次の2枚のいずれか。
初演者ボールトが最後に辿り着いた5回目の録音は90歳に当たる1978年のもの。
本家本元だけにプレミアム価格となっている。けれど無理をしてプレミアム価格を求めることはないと思う。
レヴァイン盤は手頃な価格で手に入る。新しい録音ならではの浮遊感もある。平均的でいえば、録音の良さも含めて満足できる。
冨田勲がシンセサイザーで挑戦した当時の話題作。
メロディーラインが浮かび上がる。
オーケストラのようなピアニシモやフォルテシモがない分
楽曲の構造が掴みやすい。
ステレオ装置で聴くと浮游する音空間に驚くだろう。
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火星…楽曲の完成度が高いせいか、何度聴いてもあきることがない。闘いの神火星の残忍な一面と背後に漂う快楽が音楽として結晶している。レヴァイン盤は、シカゴ交響楽団の金管がたまらない。迫力と精緻な合奏能力はいくら音量を上げても足りないくらいの快感に浸る。ボールトはやや遅めのテンポで重厚に踏みしめていく。ブラスセクションの輝きではロンドンフィルはシカゴに勝てないが、重量感や音楽の押し寄せる抑揚ははシカゴ響を上回る。ボールトはこの曲の初演者でもある。
金星…惑星でもっとも美しい楽曲。ぼくはこの曲を聴いている間、創造力が汲めども尽きることのない泉のように沸き上がる。ボールト盤では、悠久から響いてくるホルンに続いて、しずしずとうたう弦楽のみずみずしさは言葉にできない。伏し目がちなヴィーナスのほのかな微笑にも似ている。レヴァイン盤もデリカシーにあふれて十分に美しいが、ボールトの滋味あふれる音楽の歩みが心に残る。デュトワ/モントリオール響は遅いテンポで楽曲の魅力を拡大して魅せる。
水星…木星への間奏曲のような位置づけである。軽妙に動く妖精の羽根がはばたき、クライマックスに向けて一瞬の光を放つ。レヴァイン盤では清澄な空間に浮游する印象派の音楽のようにまばゆく耳に心地よい。
木星…太陽系最大の惑星木星へのオマージュ。第4主題に至るまで豊穣と豊麗を尽くす音の絵巻物。自分の人生を振り返るとき、こんな楽曲が鳴り響く人は幸せに違いない。堂々と滑り出しあの旋律を淡々と奏でつつ踏みしめていくボールト盤の味わいは80歳代の老指揮者が辿り着いた朗々とした世界観。身体の細胞がとろけていく刹那かも。一方でレヴァインは早いテンポで颯爽と進めつつ、あの主題は若武者らしく恰幅豊かに響かせる。
土星…老いていく人生を土星と重ねたもので、重い足取りで歩む。ところがふと若い頃の輝きが走馬燈のように強い光を放つ。けれどその光は長く続かない。終焉に向けてすべてを解き放って踏みしめていく。音楽でこのような深淵を表現しえるのか。最初はとっつきにくいが、スルメのような音楽。
天王星…冒頭で最後の審判のような金管が鳴り響くと、行進曲のような意外な展開となる。つかみどころがない眩惑のような音の魔術。レヴァイン盤で聴くと、オーケストラの醍醐味が部屋に響き渡る。
海王星…セーラームーンでは、ヴィーナス(愛野美奈子)が好きだが、惑星のなかで神秘あふれるドビュッシーのような印象派の楽曲が海王星。深沈と海王星の氷に沈み込んでいくような趣き。やがて人魚の合唱が遠く聞こえてくると神秘の海が部屋に横たわる。ああ、海王星。
惑星は意外にも高価なオーディオ装置で聴くよりも
タイムドメインのようなデスクトップオーディオで
その繊細な音の扉をひらくほうが楽しい。
あなたはまだホルストの惑星を聴いていない?
これから聴く楽しみが増えましたね。
さて、10月8日の皆既月食を楽しみに。
【参考】太陽系をビジュアルに見たいときは
画面ではなく紙(本)で見たい
夜の静寂で太陽系に思いをはせるとき
心がしずしずとひらかれていく。
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