月を見ていて思った。
「南の花嫁さん」はいいな。
この歌が世に出た昭和17年の当時は知らないけれど
籠のオオムだけをおみやげに
隣の村に嫁入りするという世界観にふわふわと誘われる。
どんな時代背景や曲の意図があるかは知らない。
戦勝の傍らで時代を覆う影。
南洋までを支配下にという野望とは別に
歌だからこそ浮き世離れした世界を描いてみせたのでは。
この身ひとつで嫁ぐ幸福な女性はもういない。
21世紀の日本人は愛に臆病になってしまったのか。
経済や分別、おひとりさんの気楽さが上回るというのか。
https://www.youtube.com/watch?v=PhafGWOyRHA
高峰三枝子の歌い方が絶妙だ。
時代を超越した鼻歌のように
羽毛が絹をまとって軽やかに舞うように
くるくるくると踊るような
舌たらずのスタッカートのあとの
思いがけないレガートなフレージングに
はっと気付かされる。
楷書のように端正でありながら
裏返りそうで裏返らず
さりげなく揺れる音程。
(意識して揺らしていないのだ)
歌は愛の歓びをちらりを垣間見せ
こぼれる花の花かんざしに
にっこり微笑む今宵のスーパームーンのように
自信にあふれて去って行く。
何度でも聞きたくなる。
(音源は戦前の音源=SPと戦後の録音があるようだ)。
万葉の時代には戻れないけれど
素朴な愛の感情はなにより大切にしたいもの。
高峰三枝子全曲集
この時代の唄を集めて遊佐未森がうたったアルバムがある。
彼女も南の花嫁さんに共感しきっているのだろう。
(彼女のキーは♭=黒鍵がたくさん付いている?)
いまの時代に歌って欲しい人はやはりこの人かも。
「檸檬」と題された選曲がたまらない。
「ゴンドラの唄」や「蘇州夜曲」も歌うのだ。
遊佐未森「檸檬」
YouTubeでは誰がうたっているかわからないけれど
(小柳ルミ子? この人もいい)
楽しいイラストで彩られた音源があった。
ほのぼのとする。
https://www.youtube.com/watch?v=fIN1BI4fZ4A
今宵のスーパームーンは月の光を浴びて
南の花嫁さんに染まっていく。

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