2024年08月30日

牟岐町の渚は、ひっそりとヒトを引きつける(砂美の浜)


牟岐町内で水遊びがしたくなる渚がいくつかある。モラスコむぎの前の小島の浜、さらには、砂美の浜、そして内妻海岸

小島の浜には松が磯という島があって干潮時に歩いて渡れる。磯には神社まである。そこは、古牟岐からも歩いていける距離にあって、地元の人の憩いの場所となっている。

砂美の浜は、満月に近い月が東の海から昇るのが見られる。砂の階調が美しく、季節を通じて投げ釣りをしている釣り人が多い。

内妻海岸の南端に内妻川が流れ込み、川沿いの崖を登って神社にたどり着く。ここはサーファーの姿が絶えることがない。

それぞれが一大観光地ではないけれど、渚や川が好きな人間にとって、足を向けてしまう場所。

今回は、砂美の浜。太平洋高気圧の勢力を感じるここ数日だから、渚のたたずまいも明るい。明るいけれど、どこにでもありそうで、どこにでもない渚
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広い渚ではないが、均整のとれた感じ
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砂美の浜とは名のとおり。砂の階調に心を預ける(レンズを向ける)
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沖合にはクジラのような雲が行く 背後にある太平洋高気圧の威を借りて
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渚から陸側を見れば、湿地ビオトープがある。もしかしたら以前は水田だったかもしれない。
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東の空から昇る月も眺めてみたい場所
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タグ:砂美の浜
posted by 平井 吉信 at 00:25| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2024年08月29日

台風情報チェックリスト(再掲)


徳島県南部にお住まいの知人のご尽力で作成されたものを、みなさまと共有いたします。

台風情報チェックリストは、災害時に役立つリンク集ですが、使い勝手なども含めて記載しています。
(以下をブックマークしてお役立てください)
http://soratoumi2.sblo.jp/article/184340384.html
posted by 平井 吉信 at 15:41| Comment(0) | 気象・天候

2024年08月28日

太平洋高気圧に浮かぶ雲(南阿波サンライン)


台風10号を西へ押しやる太平洋高気圧の姿は見えないけれど、はるか東南の洋上に横たわっている。

川を見る度に思うこと。8月に入って少雨が続く徳島では恵みの雨が欲しいということ。
梅雨明けがまだ続いているような気分。たまには適度な大水で川底を流してもらいたい。

そうはいっても、恵みと災いをもたらす水、ヒトの思うようにはいかない。
せめて色で可視化したい、太平洋高気圧。
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海岸性照葉樹が前に来ると、太平洋高気圧の印象が少し変わる。海洋の神様がもたらす雨を待望する木々の神様という構図になる
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遙か室戸岬までを遠望する海岸線、そのぼんやりと翳む青、碧、蒼のなかに、無数の生命と陰影をたたえて(讃えて)空と海が横たわる
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台風10号の襲来が少しずつ伸びていくと、地球の水の収支が変化する。熱い海のエネルギーをより多く受けることがどのような影響をもたらすのか。
posted by 平井 吉信 at 01:14| Comment(0) | 気象・天候

2024年08月27日

台風が来る数日前から上空の大気には異変があるのかも


日本列島に近づく台風の挙動が例年と違うようだ。西日本よりも先に東日本に接近したり、西日本をめざす台風(今回の台風10号)のコースが読めないなど。

2024年はラニーニャ現象があり、日本の近海、特に西側で台風が発生しやすいといわれる。さらに連日の驚異的な猛暑と晴天をもたらす太平洋高気圧の勢力が強いため、その縁を迂回するように進む傾向があるのかもしれない。

近年の異常気象をめぐる新聞の見出しを拾ってみた。
・猛暑、豪雨の異常気象が続く
・異常気象、世界を襲う
・温暖化でアマゾンから水が消え、火事が森を焼き尽くす
・シベリア「8万年に1度」の異常高温 北極圏最高の38度、永久凍土喪失も
・地球沸騰の時代が到来」欧米、脅威的熱波 アスファルトでやけども
・熱波、あえぐ海 サケ、漁期前倒し ウニ、赤潮で大量死
・今年の台風『過去に例がない警戒を』
・日本近海の水温、今年前半は過去最高

雲を観察することは大気の意変に気付き、身を守ることにもつながる。海や川、山や沢へ出かける人は特に。

12時43分 東の海に入道雲が湧き出した(雄大積雲)。これは特に珍しくなく、雲の形状からすると、まだ上昇気流で成長しそうだ。この日は塔状雲を伴う雄大積雲/積乱雲を多く目撃した。
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17時20分 西の空に太陽を縁に載せたような巨大な円形テーブルのような雲が出現。中心部は暗く、地上に到達しているかどうかはわからないが、おそらく降水となっている。周辺は明るく有毛形状となっている。ここは盆地で山間部の地形がもたらすレンズ形状で、積乱雲由来と判断。レンズの画角は33o相当(準広角)なので5km程度の大きさはあると推測。指輪でダイヤ(太陽)が輝いているようだ
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右手を拡大してみた。回転成分を感じるので上昇気流とそれに付随するウインドシアがあるのかもしれない。地上付近では竜巻やダウンバーストが発生しているかもしれない。レンズの画角は75o相当(中望遠)
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18時40分 日没直後の東の空に出現した反薄明光線。左の朱色の雲は、太陽が没した角度からして赤く染まるということは高度が高い雲で、濃密巻雲と判断。積雲が日没によってエネルギーの供給がなくなり、上空で巻雲になって紛れていく途中なのだろう。レンズの画角は24o相当(広角)
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一日にうちで雲と天文現象はめくるめく現れて消えていく。台風の出現がもたらす日本周辺の大気の現象が雲に反映されている。雲を眺めるのが習慣になっているが、数日後に襲来する台風10号を注視しているから。

追記
エアコンを使っていない理由(温暖化を見据えて身体を暑さに慣らす)はこれまで何度も書いているけれど、暑さ対策は今年初めて行った。
パソコンはOS起動と同時にUSB扇風機で通風口から強制送風しているのは例年と同じ。

人間はこれまで暑さ対策をしてこなかったが、今年はDC扇風機を購入した。それまで扇風機を使わなかったのは書類が飛ばされるからで、DCモーターだと弱風の制御がうまくいく。これによって風が身体に当たることで室温30度〜33度は快適に過せるようになった。

さらに首に巻き付ける氷のような装備を付けた。溶ければ冷凍庫に入れて再利用する。首筋を冷やすのはCPUの冷却と同じだなと感心。確かに人間の脳は酸素をかなり消費する臓器で発熱も多いのではないか。だから冷却するために首筋を冷やすのは理に叶っているのかもしれない。

posted by 平井 吉信 at 00:54| Comment(0) | 気象・天候

2024年08月24日

夏の雲


夏の雲は太陽のすさまじい熱源を受けて、地球の水循環を垂直に大胆に見せてくれる

水蒸気の網状組織のような房状巻積雲。高度が高いだけに背景の空が暗い
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地平線から湧き上がる絵に描いたような入道雲(雄大積雲)
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上空の大気の不安定さを表している。台風が接近する予兆では?
posted by 平井 吉信 at 16:54| Comment(0) | 気象・天候

2024年08月22日

剣山物語 キレンゲショウマの八月 幽閉の舞台は源流域の森にある


(物語解説編)
鳴門秘帖(吉川英治)、阿波狸列伝(三田華子)といった名作は、剣山に幽閉される味方を救出する物語を含む。それは日常からの隔絶を表す。

剣山の西斜面には祖谷(いや)地方がある。東祖谷には日本の秘境を求めて海外から人々が多く来訪するようになった。東祖谷の知名度を世界的に広めたのはこの地に住んで発信を数十年続けているアレックス・カーさんの功績が大きい。

祖谷は平家の落人伝説でも知られ、秘境中の秘境であった。そこにかずら橋を架けて敵が襲来すると橋を落とす(退路を断つ)。その入口に当たる吉野川の渓谷、大歩危小歩危も東アジアからの観光客で賑わっている。大歩危小歩危と祖谷は同じ観光エリアでありながら客層が異なる。

剣山にはアーク伝説、ソロモンの秘宝が埋蔵されているなどの伝説があり、生涯をかけて研究している人もいるようだ。つるぎ町貞光から剣山をめざすとき、どうしてあんな場所に家があるのかと不思議に思う高い場所、尾根に近いところに民家が点在する。その急傾斜地での農業が世界農業遺産にも登録されている。昭和の時代には、大蛇を見たという人々が探検隊を結成してテレビに放映されたこともあった。ぼくも富士が池からの往路で2メートルを優に超える蛇を見て驚いたことがある。立派な蛇だが、大蛇とまではいかないかも。

剣山には山伏の修験の場、行場がある。険しい岩の割れ目や洞穴をくぐり抜けるもので、キレンゲショウマを見に行くときに少し寄り道すれば近寄ることはできる。
剣山の山頂付近はなだらかな山容で大人数が休憩できることでは有数の山だろう。ご来光を見るにはうってつけである。

剣山は、南斜面には那賀川最大の支流の坂州木頭川の上流部である槍戸川、北斜面は吉野川支流の穴吹川、西斜面は同じく吉野川支流の祖谷川の源流にあたる。穴吹川は四国一の清流として知られているが、人家のほとんどないエリアを多くの雨を集水するのだから清浄なのは当たり前。しかし昭和51年には剣山の北東斜面が崩落して穴吹川上流の深い渓谷を埋めてしまった。今日でもなだらかな源流部のままである。

剣山はリフトを使えば、天候が安定していれば容易に登山が可能である。しかし、富士山に次ぐ標高の高い測候所が設置されたことがあり、昭和40年3月16日には測候所職員が雪崩で殉職された。この測候所を建てたのは地元の北岡組。車道がないので索道を用いた人海戦術で生コンを運ぶなど苦難の建設であったという。

これまでもこのブログでは剣山の魅力をお伝えしているが、八月は「天涯の花」キレンゲショウマのほか、源流の谷、巨木の森、明るい稜線から見える亜高山帯の針葉樹林などを採り上げる。

(登山編)
リフトを使わない場合は剣神社から登り始める。県外から来てひとつでも多くの山座をめざす人はリフトは選択肢(巨木の森を見ることはできないが)。ただし、駆け足のピークハントでは剣山に限らず山の良さはわからないと思う。

劔神社の階段から登り始める
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歩き始めてすぐに魅力的な森の風景が続く
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やがてリフトの終着点、西島駅に着く。ここからは、右手(西)へは次郎笈へのトラバース、その次の右手が大剱神社経由の剣山山頂、稜線をたどるのが直登コース(途中で行場・一ノ森への分岐あり)へと分岐する。
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道ばたの植物を見ていく。もっとも多いのはタカネオトギリという黄色い花
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カニコウモリの群落を抜ける
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シコクフウロも多く見かける。思いがけずコケティッシュな花弁が笹の間から見え隠れする。シコクフウロがあるから夏の剣山は愉悦感という人も
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石灰岩地に生えるヒメフウロ。日本では剣山のほか、自生地はそう多くない
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シシウド
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よく似ているが、剣山固有種のツルギハナウド
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不動の岩屋も行場のひとつ。この辺りは穴吹川の源流筋(源頭近く)
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見上げた空はさらに高く
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キレンゲショウマの自生地は穴吹川源流域。霧が出ると深山幽谷に黄色の花弁が頭を垂れて群生する。キレンゲショウマが宮尾登美子「天涯の花」の印象(月光の花は凛として気高い)に近いのは穴吹川源流をたどる上の道。
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谷筋に咲くギンバイソウ。キレンゲショウマと自生地、花の時期が近いのでともに見られる
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下を向いて咲くので、花弁の裏を花を見てしまう。覗き込むと万華鏡のよう
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花畑に溶け込んだキレンゲショウマの群生は「月光の花」を宴に変える
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数年前まで一方通行であったキレンゲショウマの谷が双方向になっている。花を撮影しながら相互にすれ違うことになるが、良い撮影場所が限られているだけに渋滞の原因となる。登山者は自主的に反時計回りを徹底するというのも方策(従来の一方通行)。一ノ森方面へ行く人も上の道からキレンゲショウマを見て東進するので問題はなく、山頂をめざす人は再び刀掛けの松まで戻るのでこれまた一方通行は支障がない。

キレンゲショウマは下の道が個体数が多い。
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大きなもみじの葉がキレンゲショウマの葉
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キレンゲショウマに混じって、舟を吊った黄色い花の意だろう、キツリフネ
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同じく黄色のミゾホウズキ
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森に抱かれて群生する
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剣山の花畑はいまではシカの食害を避けたネット内のみだが、ソバナ、シコクフウロ、ナンゴククガイソウ、ツルギハナウド、オタカラコウ、ギンバイソウ、ホソバシュロソウ、タカネオトギリ、レイジンソウ、トゲアザミなどが群生する。なかでもソバナのかれんさは心に残る
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ソバナの白花。どんな色でも楚々としている
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ナンゴククガイソウ
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花弁に群がる虫
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西島から直登コースにある刀掛けの松へ戻ってくる。山頂へは直登と大剱神社経由がある
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シコクシラベなどの針葉樹が白骨林となっている
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剣山山頂直下にある剣山ヒュッテ、剣山本宮
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山頂付近のなだらかなミヤマクマザサの上の木道を歩く
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深い森を横たえた剣山も山頂付近はどこがそうなのかわからないほどなだらかで広い。一度に数百人がご来光を眺められるかも
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剣山から一ノ森の南斜面、さらに南の槍戸山の北西斜面にある針葉樹の森は笹原に浮かぶオアシスのよう。針葉樹とは、シコクシラベ、ヒメコマツ、コメツガ、ウラジロモミなど。シコクシラベという名前を聞いて、どんな木なんだろうと思っていた。これらの林は白骨林も散見されるように更新が早いという

 → シコクシラベについて、四国森林管理局―鎗戸シコクシラベ林木遺伝資源保存林

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剣山から次郎笈への尾根道は1本の線がうねるように続いていく心弾む景観。下りはじめると、誰もが記念写真を撮る場所。見知らぬ人に撮影をお願いして会話が弾んだり…。思い思いに愉しめればいいね
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剣山を西へ次郎笈との鞍部(ジロウギュウ峠)に降りて次郎笈に登り返すと、三嶺までの縦走路の開始である。
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今回は、剣山北斜面を西島方面へ戻ることにする。この地区は石灰岩地帯となって巨岩が連続する。ただし大木は見当たらない。石灰岩地帯ゆえに名水が大剱神社周辺に湧き出す。
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石灰岩地帯の象徴の大きな岩
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登山道も白く植生も異なる。この多様性が剣山ならでは
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西島まで戻ってくるとリフトの人はここで登山(下山)は終了となる。リフトを使わなければ見ノ越駐車場までは下りで40分ほどかかる。下りのルートも2つある。行きと別にルートを通ってみたい人は、祖谷川源流コースがある。
祖谷川源流域、秘境祖谷の狭いV字渓谷を開いた祖谷川のその源流は剣山の北西斜面、源頭はおそらく大剱神社あたりにある。そこから谷を下っていくと、巨樹の森が現れる。祖谷川も穴吹川も森の川なのである。
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祖谷川源流域、穴吹川源流域こそは、鳴門秘帖や阿波狸列伝の物語に描写される、物語の鍵となる人たちが幽閉された場所、深山幽谷がたどり着いた岩窟の原形ではないか。剣山に来た証しとして、この2つの源流域は見ないで帰れないのではないか。そんなことを考えたこともないのに、毎回2つの源流域は見ようとしている自分に気付いた。その変わり、山頂は行かないこともある。ただし稜線観望なら四国の針葉樹林と笹原が混じるしなやかにうねる稜線を見飽きることはないと思う。それはそうと、宮尾登美子さんはキレンゲショウマの現地を訪れることなく文章にしているという。切り立ち込める源流の谷筋にひっそりと咲くその姿こそ、「…月光の花は凜として…」の描写になるのだろう。
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祖谷川源流の谷。麓からここに至るまでがどれほどの道程であったか。こんなところに幽閉されると絶望してしまうのではないか。自動車道路がない時代、森はいまよりずっと深かった(遠かった)。里の人がお山に登るのは木地師などを除いてほとんどなかったのでは。まして沢筋を間違えずに来るのは困難であったはず。
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日照りが続いて沢は伏流している。祖谷川源流域は森を下っていく渓相で日が当たらず水は冷たいはず
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逃げないシカ。鳥獣害の象徴
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広葉樹の森から針葉樹の森までの遷移と多様性こそがこの山の宝物。リフトで山頂へ上がって戻るだけではわからない剣山の奥深さがある
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いつも剣山を想うとき、文字が心の片隅からあふれてはみ出してしまう。俗化が進んだ山域のように見えて実は見る人の深みに応じてその深さを垣間見ることができる山岳。
posted by 平井 吉信 at 22:23| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2024年08月18日

サーフィンとホテルリビエラししくいと真夏の大手海岸(道の駅宍喰温泉) 


徳島県最南端のまち、宍喰町、さらにはトンネルを越えた高知県東洋町にはサーフィンに適した環境が整っている。大手海岸には道の駅宍喰温泉にサーファーが長時間を停車すると一般の利用者が使えなくなるため、サーファー用に駐車場が整備されている。東洋町には白浜海水浴場に海の駅東洋町があり、その隣の生見海岸はサーフィンのメッカとしてサーファー専用駐車場が完備されている。この渚は20世紀の終わり頃に世界サーフィン選手権が開催された場所であり、ぼくの知人たちもこの渚の常連だった。

大手海岸では波の浸食から護岸(国道55号線)を守るため、消波ブロックが波打ち際に置かれている。これが美感を損ねるので波の応力を波打ち際から少し沖で発散させつつ護岸を守り、その一方で自然界では安定しないサーフィンに適した海底地形を、サーフィンに適した波を安定的につくる海底テラスの整備(デルタ型リーフ)なども検討されたことがあった。

昭和のサーファーは、風紀が乱れている、お金を落とさず車中泊で長時間車を停める、ゴミを置いていく、漁業に影響を与えるなど地元からは嫌われていた。しかし一部の人たちが受け容れに向けて尽力しつつ、観光と漁業の共存に向けて調整や協議が行われた結果、現状に至った。

大手海岸に面するホテルリビエラししくいは、道の駅宍喰温泉に隣接し大手海岸に面している。どの部屋からも海が見えるのは当たり前として、特にすばらしいのは満月前後の宿泊で、東の水平線から昇った月が海面をゆらめきながら、その光の反射が灯りを消した室内にゆらめく。こんなホテルはそうは存在しない。好きな飲み物でも味わいながら、その場面に接することができたら生涯忘れられない経験となるはずである。大手海岸へもホテルから徒歩2分である。

→ ホテルリビエラししくいのタグ

道の駅宍喰温泉には、その名のとおり宍喰温泉があった。ここはぼくもよく通ったもので、一時期は、水床荘の温泉、宍喰温泉、ホテルリビエラししくいと宍喰町の同一エリアに温泉施設が3つあったことになる。しかし水床荘が閉鎖され、2008年にはボイラーを更新できず、宍喰温泉も解体されてしまった。ホテルリビエラししくいの2階に温泉があるが、当時は入浴料が1500円と高く、その一方で宍喰温泉は500円と手頃であったため、ぼくはこの場所が好きだった。湯船に浸かって国道の向こうに広がる大手海岸の潮騒と泡の音とが重なるようで、そこに身を置くと心地よい眠りに誘われた。

宍喰温泉がなくなってからはホテルリビエラししくいの内湯が600円にまで値下げされた。いまではホテルリビエラししくいの湯が宍喰温泉ともなっている。

2024年の夏休みの大手海岸はどこまでも快晴で、波とサーファーとがおだやかな溶け込みを見せていた。
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posted by 平井 吉信 at 23:48| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2024年08月15日

フランスの高原の素朴な歌曲集 オーヴェルニュの歌は盛夏に冷涼な音楽の打ち水


それではと、舞台を(前投稿の)三好市からフランス中南部の高原地域へと。そこで羊飼いに歌い継がれてきた民謡を採取して、管弦楽の伴奏を付加して作編曲されたカントルーブのオーヴェルニュの歌を聴いてみよう。

民謡である原曲の素朴さが耳にやさしい。牧童の初々しさ、朴訥さ、あけすけな生活の歌が源流にあって、管弦の色彩が声を包み込む。漂う声と旋律の美しさは雲が流れる高原にかかる虹のよう。角笛が丘をこだまするようなオーケトレーションの洗練を加えた歌曲集は、音楽の打ち水に打たれた感じ。初めて聴く人はその洗礼を浴びる覚悟がいる。

古くは1960年代のウクライーナ出身のソプラノ、ダウラツによって初演されたが、彼女は半年にも及ぶオーヴェルニュ地方の方言(オック語)の抑揚を習得したうえで録音に臨んだといわれる。

タニア・ダヴラツ(歌),ピエール・ド・ラ・ローシュ指揮(管弦楽団名不詳)、1963年


全曲でもっとも美しい楽曲は「バイレロ」。谷を隔てて聞こえてくる歌は、羊飼いの男女のやりとり。わたしは谷を渡れないから、あなたがこっちへおいでなさいな、と誘っている。清涼な音楽に、睦み合う前の空気感が秘められているなんて。

次の「3つのブーレ」で、ダウラツは羊飼いになって、泉の水ではなく気持ちが良くなるワインを飲みなよ、とか、羊を花畑に放してその間に…とか、素朴だけど濃厚な歌詞を、ときにあけすけに、ときに腰に手を当てて誇らしげに歌う娘さんの趣。無名のオーケストラだが情感たっぷりに寄り添う。彼女のフランス語方言もはまっているように聞こえる(他の歌手と発音が異なる)。郷土色豊かな盤というでは最右翼だ。1960年代の録音だけど、良質のオーディオ装置やタイムドメインのような敏感な再生装置でも音楽に浸れる。日本盤は盤質もよく、しかも歌詞対訳付。これがあることで楽曲の魅力の再現度が違う。

その国内盤も2種類がある。2004年に日本コロンビアから発売された品番COCQ-83799と、2017年にキングインターナショナルから発売された品番GCAC-1012/3がある。ともに2枚組。ぼくが持っているのは前者コロンビア盤だが、後者キング盤はXRCD24bit仕様で音が良いとされる。確かめてみたい気がするが、2004年版の音質もまったく不満はない。やがて後者も入手困難になりそうな気がする。

ダウラツ盤は誰もがこの音楽に描く印象そのものだが、新しい録音というなら、ジャンス盤を紹介。この歌曲集はオペラではないし、そのように歌うと貴族のサロン調となって曲が死んでしまう。ダウラツは牧童の娘らしくてよかったが、ほかの歌手ではところどころオペラティックな歌い方が鼻についてしまう。そんななかで、同じくオペラ風でない歌い方が佳い。おそらくこの曲の最新録音(2004年)。

ヴェロニク・ジャンス(歌)、ジャン=クロード・カサドシュ指揮リール国立管弦楽団、2004年


しかもジャンスは、オーヴェルニュの出身で歌唱は癖がなく、オーケストラもご当地。さらに24bitの録音で透明感がある。ジャンス盤のテンポはやや早めでストレートな表現。オーヴェルニュの歌(全27曲)からの抜粋で主要な曲は網羅されていて抜粋盤で十分。問題は新しいのに入手が難しそうなこと。ぼくは新品で1600円程度で購入できたが、いまは中古で数千円とか。根気よく探さないと中古で高いものを買ってしまうのでご注意。

それに比べると名盤の誉れの高いダウラツ盤は全集だし、入手はまだ可能と思われる。1960年代の録音とはいえ、ダウラツ盤は色彩感では新しいジャンス盤を上回っている。YouTubeなどで音源が見つかるので試しに全曲聴いてみて、気に入ればご自宅の部屋にフランス中南部の高原地方の風を吹かせてみては。

上記2枚とも入手が難しければ、アップショウ、ケント・ナガノ指揮 リヨン国立歌劇場管弦楽団、1994年

アメリカ人のソプラノながら、素朴さを失わず、歌の色彩感があり、バイレロは、二人の牧童(男女)の掛け合いで、一方が谷の向こうから響いてくるような演出がされていて、音による映像を見ているよう。音楽に浸れる点では最右翼だが、ローカル色は薄まってフランスの牧童の雰囲気よりは劇場の歌手の趣。指揮者は繊細かつ細部に血を通わせた伴奏で、純音楽としての音の磨き上げでは最右翼だ。YouTubeでレコード会社公式音源で全曲が聴けるようだhttps://www.youtube.com/watch?v=cQMsSMXU-CM&list=PL1IXBSY4jc2s3ulYvnoPaPiRPFgKC23wf


手持ちの音源。ダウラツ盤のアナログは盤面、ジャケットとも極上の状態。CD2枚はやはりダウラツ盤を手に取るが、清涼感の高いジャンス盤もリッピングして車内でかけることが多い。
オーヴェルニュの歌は、音楽の風鈴。夏の朝、高原の風がそよぐ一日をどうぞ。
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posted by 平井 吉信 at 01:33| Comment(0) | 音楽

2024年08月14日

暑い高原を涼しく歩く 真夏の塩塚高原 


真夏の湿原、ひまわりと来れば、真夏の高原。それは、風吹きわたり黄色やオレンジの花が咲き乱れる絵を描いてしまう。美ヶ原、野辺山高原、白樺湖とか。白いワンピースの麦わら帽子の女性が手を振る光景が見えてくるような。

でも、それは信州あたりでしょ、四国では、肌を突き刺す直射と、風がやんで草いきれがむっと蒸せかえす高原を思い出す、なとどいわれると返す言葉もなく。そのとおりですから。

だから、ここも誰もいない。パラグライダーをする人以外は。誰ともトレールですれ違わない。日陰もない、太陽の距離も近い。そんな高原のススキのなかをかき分けて進む。「きょう、ママンが死んだ」といって殺人の動機を「太陽のせい」とつぶやくあの小説のよう。太陽の監視の下、汗と塩が肌からまとわりついて離れす、まるで自分の汗で自分を溶かすナメクジのような。もう、やめておきますこの辺で。暑い夏によけいに暑いのが四国の夏の高原。それなら暑いなりに愉しめれば良いのではと。

池田からのルートは3つあって、もっとも道が良いのは小川谷から平野経由、途中の景色が愉しめるのは黒川谷川沿いの黒川から平野経由、やや路面が悪いのは、小歩危峡から白川谷川、仏子谷川経由で山頂直下へ向かうルート。

まずは黒川谷川で涼しげな谷と水車を眺めてから(半田岩)
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続いてホタルの里公園付近で
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塩塚高原の裾野が見えてくると声をあげてしまう
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クルマを停めたらお店をひらく。
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そのとき、水を忘れてきたことに気付いた。カメラやレンズや虫除けは持っているというのに、ペットボトル数本は台所の机の上で汗をかいているのだろうな。まあ、歩いても3時間ぐらいなので熱中症にはならないが、と考える

肉と梅干ししか入っていないが夏はやむをえない。冷温を保って持参している
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スミレ(Viola mandshurica)の夏葉も元気だ 来年の春が愉しみ
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咲き残りの紫陽花
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オトギリソウのつぼみ
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ススキに寄生する植物 オオナンバンギセル
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ウツボグサ
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夏の草原にはなぜかオレンジ色が目立つ。ヒメヒオウギズイセン、ヒメユリ、このヒオウギなど。いずれも「ヒ」で始まるのがおもしろい。ヒオウギは国内では神山町で多く栽培され切り花として出荷されているとか。自生の姿は格別だ
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塩塚高原の最高峰、塩塚峰への道中で塩塚展望台を振り返る。いくつかの尾根がなだらかなコブを形成する
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高原の尾根歩きはいつも愉悦感
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塩塚峰(1,043メートル)に到着する。ピークハントの高揚感はほとんどないけれど、愛媛県側の視界が開ける。
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パラグライダーの発着場がある。きょうは飛んでいる。
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塩塚高原の生態系は山焼きによって保たれている。さらに草刈りが入ると春のスミレの出現が違ってくるかもしれない
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これは好きな1枚
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Windows XPの深遠な世界を再現してみた(チャンチャン♪と起動のBGMが脳内に鳴る人、職業病ですね)
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フジフイルムの色だね。このような場面ではPROVIAしか使わないけれど緑の再現性がフジ
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今度は塩塚峰の西(愛媛県側)から接近する
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夏空は刻一刻と移り変わりながら草原に雲の影を落としていく。夏の高原は雲の影を愉しむ時間
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でも、このブログを見たからといって塩塚高原へ行く人は1万人に1人だな。暑いから。
水分を摂っていないので判断力が鈍っていると仮定して慎重に山を下る。池田のまちなかのスーパーで500mlの飲料を飲めるかな?と思って買ったが、運転していると5分で飲んでしまった。

追記
このエリアからは小歩危峡は近い。真夏の小歩危峡
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これにより、真夏の湿原(黒沢湿原)、真夏の高原(塩塚高原)とで真夏の三好市三部作、別名「真夏の大三角」を形成する。その中心には三好市の秘宝があるということでいかがでしょうか?
タグ:塩塚高原
posted by 平井 吉信 at 21:20| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2024年08月13日

陸地から見えた巨大な船の正体と 過去から見えた未来の田んぼ


夏、猛暑とひとことでいっても梅雨明けの頃との違いにお気づきですか?
それは、午後に必ず発達していた積雲(雄大積雲、積乱雲)の生成が控えめになったこと。
気温は変わらないのに、太平洋高気圧の張り出しの変化なのか、ほかに原因があるのか?
季節の遷移を感じているだけなのか?

空、地平線を無意識に眺めようとして、視界に入ると「意識して」見ようとしている自分に気付いた。気象に関心が深いので、空を見る動機とその後の意味付け(記憶)ということなのかも。

そうしたら、普段と異なる景色が。
見慣れた田園地帯の川の向こうに、それまでなかった高層ビルが一夜にして建ったかのよう(秀吉の一夜城?)。あるいは鹿児島沖で永遠の眠りについていた戦艦が装いを新たに使命を帯びて飛び立とうとしているのか。
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拡大してみた。船に見えませんか?
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仕事の訪問先を出て見上げた空の絵のような巻雲。飛行機雲由来が3本あって、いずれも複雑に蛇行する。直行する方向に強い気流の流れがあるのだろうな(横位置と縦位置で)。
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年々暑くなる気候の下で、あと数日で刈り取りを迎えた稲穂が実る。温暖化が示唆する未来と、風に吹かれて自転車を漕ぐ甘美な少年の記憶が交錯する夏の午後。


追記
宇宙戦艦ヤマトの正体は、豪華客船ダイアモンドプリンセスだった。陸地からもこんなふうに見えるんだね。あと1時間少々で港を出て行く予定のようだ。
posted by 平井 吉信 at 22:19| Comment(0) | 山、川、海、山野草