富士フイルムのデジタルカメラには、フィルムシミュレーションというアルゴリズムが組み込まれている。他社にある画質選択モード、例えば、人物、風景、夜景、ナチュラルなどと色やコントラストの調整された選択肢と同様のものだけど、○○用といった打ち出しはせず、フィルムの名称(自社のフィルムにないものは架空の名称)を付けている。なかでも、フィルム時代のポジやネガのようなトーンを再現する選択肢は富士ならでは。
富士フイルムによる説明 https://digitalcamera-support-ja.fujifilm.com/digitalcamerapcdetail?aid=000003156
銀塩フィルム時代は、フィルムは巻き戻して詰め替えしなければ入れ替えができなかったが、デジタルは1コマごとにフィルムを代えるように画質を選択できる。さらに予め設定した3種類のフィルムシミュレーションで撮影できるブラケットモードもある。
ぼくが普段使っているのは主に2つ。富士フイルムがスタンダードと呼んでいるPROVIA、それとスタジオでプロがポートレートを撮影する際の素材系の発色をするPRO Neg. Std、金属などの質感を表現するときはクラシッククローム。さらにモノクロ系も充実している(富士、パナソニック、ライカがモノクロ御三家といったところ)。
普段はほとんどPROVIAのみ。ただスタンダードといいながら見栄えのする仕上がりとなるため、色彩、コントラストを抑えた独自の設定に変えている(少し地味にしている)。このオリジナルPROVIAをプリセットの1に設定して常用。海や川、田んぼ、渓流、苔、新緑、紅葉といった自然界でもっとも活用範囲が広い。PROVIAは色温度が低いときなど緑の暗部がやや青みを帯びて人工的に感じることもある。ホワイトバランスをオートにすればそうはならないが、逆に森や緑のみずみずしさが失われるのでホワイトバランスは太陽に固定している。
PRO Neg. Stdは忠実色といわれており、実際に写してみてもそう感じるが、一方で見た目の色彩よりも地味に再現されることも多く、色やコントラストの調整を行っている。これをプリセットの2に設定して次によく使っている。
ぼくは緑(碧・碧)の再現を重視するので、気になる場面ではフィルムシミュレーションとホワイトバランスを変えて撮影する。カメラの背面液晶やEVFでは正確な再現がわからないので持ち帰ってパソコンとディスプレイで確認することとなる。
数日前に、富士フイルムから新しいフィルムシミュレーション「REALA ACE」がファームウェアの更新で手持ちのX-T5に摘要されるようになったので、とくしま植物園に出かけて3枚ブラケットで撮影。PROVIA→ PRO Neg. Std→ REALA ACEである(それぞれは同一の設定)。



花畑では、PROVIAの鮮やかさが目に入るが、それが気になることもある(今回はブラケットなので独自設定のPROVIAではない)。PRO Neg. Stdは、赤の再現が少し違うように思う。REALA ACEはPROVIAの赤と似ているが、緑系はシアンがからない。ハイライトに乗っていくようで、独自に設定する際はハイライトを柔らかく(マイナス1)に設定しようと思う。



赤桃色の花を主題に据えた2カット目も同様。PROVIAは赤がやや蛍光色のようなあでやかさ(Velviaほどではない)で、背景から浮かび上がる。PROVIAで感じている違和感はこのつくりもの感があるところで、そのため標準設定から変更して使っている。しかしPROVIAは黄色から青っぽい緑まで描きわけができて色の転びも少ないので日本の自然(森、里山、川や渓流、海)を撮影するのに適している。
ブラケットのPRO Neg. Stdはデフォルト設定なので赤が少し転んでいるように見えるが、緑の再現は好ましい。
REALA ACEは、赤い花は良い加減で背景の緑とも溶け込む。ハイライトへの乗りが立体感となっているが、中間調のコントラストが立っているようだ

上はオリジナル設定のPROVIA。デフォルトのPROVIAより落ち着いていて対応の幅が広がっていると思う。



植物園の庭。PROVIAの緑はわずかにシアンがかっているのがわかる。ここはPRO Neg. Stdが好印象。



近景から遠景までの緑のみを写してみた。

フィルムシミュレーションのブラケット(標準設定)から離れて、オリジナル設定のPRO Neg. Stdで撮影した竹林。
マニアックな話題のようだけど、身近なところにある緑の階調は宝物と思っているので、それをデータに定着させるための設定について考えているところ。
(フジX-T5+XF60mmF2.4 R Macro)
※メーカー名の富士フイルムの「イ」は大文字、フィルムシミュレーションの「ィ」は小文字
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