その3から続く
日峰山、小神子、越ヶ浜、大神子への経路を含む山域全体を理解できる地図を作成してみた。
赤線…日峰山山頂から北東へ延びる尾根筋から大神子へ降りる踏み跡
赤線…日峰山山頂から北東へ延びる尾根筋から越ヶ浜へ降りる踏み跡
赤線…遊歩道のもっとも下がった地点から沢沿いに越ヶ浜へ向かう踏み跡
桃色……遊歩道(阿波の道・讃岐の道・伊予の道・土佐の道をつなぐ階段の道)
緑…小神子と日峰山から灯台への尾根筋からのトラバース道(遊歩道/越ヶ浜方面)
空色…日峰山山頂から灯台へ向かう尾根筋の散策路(展望所や石像あり)
オレンジ破線…小神子から大神子までのトラバース道がかつて存在した可能性(わずかな痕跡あり)

(国土地理院電子国土から切り出した地図に平井吉信が書き込み)
国土地理院地形図で描かれているもう1本の遊歩道を横切るトラバース道は廃道(道の痕跡がわずかに入口にあるのみ)である。地理院の地図にも誤りはあるし、かつての地形や地勢が変化してもそのまま残されていることがある。
けれどここに何らかの人為的な痕跡(家屋、田畑など)があったなら、そこから東の山裾と沢をなぞるように海へ出るルートがあった可能性は想定できる。地形図の点線はかつての名残で現在は痕跡を見つけるのが困難となっている
それではここにあった人為的な痕跡とはなんだろうか。真ん中の沢沿いに平坦を感じる地形があり、遊歩道から外れて足を踏み入れてみると石垣が沢と直角に連続していることを確認。見た目は砂防ダム(コンクリートではなく石垣だが)である。



そこでこの施設(工事)は何のためにあったかを考えていくこととする。見た目で明らかなように自然が形成したものではなく人の手によるものである。
(1)沢筋にあることから砂防の床止め工
床止め工とは砂防ダムのようなものでコンクリートを使わない時代に石積みで行ったと想定。その目的は下流や護岸を守る治水にある。
ところが下流は越ヶ浜であるが、その手前に湿地(荒れ地)がある。3つの沢を集める湿潤(家がじめじめしてカビが生えてたまらないだろう)で海風をまともに受ける場所に家屋があったとは考えにくい。よって治水の床止めではない。普段は水はわずかしか流れない沢でも大水時には一変するものだが、所詮は集水域(流域)が小さいので治水目的ではない。
(2)棚田もしくは段々畑
沢筋といってもこの場所は涸れ沢であり、棚田(段々畑)の跡ではないか。というのも「平坦を感じる場所」と書いたように、もともとはある程度の平坦な場所が崩落した土砂で埋まったのではないかと考えた。
20年以上前にはじめて小神子からのトラバース道をたどったとき、確かに廃屋(作業小屋かもしれない)があった。それがこの真ん中の沢沿い(★印付近)ではなかったかと記憶している。それが近年はまったく見かけなくなった。
その理由としてこの沢筋で崩落があったと記憶している。その崩落で廃屋が流されたが埋まったか。いずれにしてもそのときの土砂が棚田(段々畑)の痕跡を埋めてしまったのではないか。
ところがそれから年月が経ち、沢の澪筋を水が流れて堆積した土砂の一部を流したとすれば、このような痕跡となるのではないか。廃屋比定地の周辺でやはり人為的な地形と石積みがある。


ここからはさらに不確かな推論となる。小神子地区には水利が良くないためか水田がない。そこで水の得やすいこの場所で棚田をつくって集落の食糧としたのではないか。そのときの農機具の置き場所(納屋)、作業小屋、もしくは人が住んでいた可能性も捨てきれず、なんらかの建物があったのではないか。ぼくが二十数年前に見た廃屋はそれではないか。
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徳島市と小松島市から近いのに無人の渚である越ヶ浜とその周辺はまったく忘れ去られていたが、21世紀になって遊歩道ができて歩きによる接近ができるようになった。
かつて徳島市から小松島市にかけての沖合には地震で沈んだ島(お亀千軒)があるといわれる。昭和の時代には、鳥居が沈んでいるといって海中の探索をする人たちがいた。父は根井鼻を通り魔と呼んでいた。
大神子は病院やテニスコート、バーベキュー場、フィールドアスレチックがある静かな保養所。かつて徳島藩蜂須賀家の保養所が勝浦川河口南岸にあったという(いまのスーパー銭湯のあたりか)。
越ヶ浜はこのブログで探索したとおりかつての人為的な痕跡はあるけれども現在では無人の渚。
小神子は静かな里海の集落で集落を見下ろす丘には、海を眺められるレストラン、やがては一部上場企業の保養所に変わり、いまではそれもなくなって廃れてしまった。
歴史がどうであれ里海の記憶はここにあったのであり、(地権者のご理解もあって)21世紀の私たちが立ち寄れる場所となっている。そのことを記しておきたい。