高知県東南部の山間部は四国のもっとも奥深い場所。そこを流れているのが物部川。紀伊水道側へ流れる那賀川とともに急流渓谷の河川である。
青柳裕介さんのマンガ「川歌」はぼくが持っている唯一のコミック(全7巻)。物部川支流舞川の分校へ新米教師が赴任してくるところから、しばてん(河童)と人間との物語が始まる。
川歌での舞川分校の生徒は12人と設定されている。このモデルとなったのが舞川小学校だろうか。それとも林業が盛んな頃は舞川小学校にさらに分校があったのか。
けれど舞川小学校もやがて廃校となり、近年はキャンプ場として活用されていたらしいが、それも休業となっている。春の訪れとともに現地を訪れて確認したいものだ。
◎舞川小学校/舞川キャンプ場の情報
携帯の電波が入らない、薪があって五右衛門風呂に自己責任で入る、近くの川の水が冷たい…などとても素敵な場所ではないか。
https://www.navitime.co.jp/poi?spot=00004-39151900032
https://www.ogiiin.com/old/maikawa.html
https://haikyo.info/s/14998.html
http://havanero.seesaa.net/article/144288132.html
https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/main/kankyou/machizukuri/utsukushiimizube/pdf/88-392111-03.pdf
https://plaza.rakuten.co.jp/sairacing/diary/200808210000/
http://henro.gozaru.jp/20-haikou/02-g/kouti/18-maikawa/18-maikawa.html
http://shgogo65006854.livedoor.blog/archives/2809645.html
物部川に南から注ぐ支流が舞川、北から注ぐ物部川水系最大の支流が上韮生川(かみにろうがわ)。三嶺〜矢筈山の南斜面の深い森をくぐり抜ける四国の極めつけの清流で上高地の梓川も遠く及ばない。
上韮生川を遡り西熊渓谷の堂床キャンプ場からさおりが原、カヤハゲを経由して三嶺に至り、西へ向かって西熊山、天狗塚へと稜線を経由。そしてカンカケ谷、フスベヨリ谷を下って戻る三角形が四国の白眉の山ルート。

友人の河原君(高知大学ワンゲル部)に「ちょちょいのちょいの登山」とだまされて8時間歩いたが、それは経験したことのない充実感であった(このときぼくはスニーカーであった。奴も登山靴を持たないぼくに合わせてジャージにスニーカーと軽装)。
どこまでも深い原生林(後年訪れた屋久島の原生林に匹敵するかさらに深い)、さえぎるものない笹の稜線をゆく雲の上ごこち、野趣あふれる沢の渡渉、生息する動植物の営み、そして西熊渓谷/上韮生川の清涼さは生涯忘れることはないでしょう、とaikoならいう。
天狗塚からさらに西には矢筈山というブナが点在する山がある。アプローチは上韮生川から左折して笹渓谷方面へ入るのだが、この渓谷沿いに笹渓谷温泉があった。
ここは若夫婦が湯守をやっていて料理も出している。選ばれた音楽が小さな音量で聞こえてくる美術館といった趣。そんな素朴だけれど気配りの行き届いた清楚な建物。入湯料を払って掛け流しの温泉に入れば、檜の湯船から手を伸ばせば届きそうな沢。森に包まれながら湯に浸る気分。すると外から「湯加減いかがですか?」と声をかけていただく。
残念ながらこの温泉もここ10年ぐらいだろうか、廃業された。親しい人にしかこの温泉の存在を伝えなかったのは、知る人ぞ知る場所であって欲しかったし、店主ご夫妻もあまり宣伝して欲しくないとお考えであったかもしれない。この雰囲気が好きになってもらえて慎重かつていねいな運転を辛抱強くできる人でなければ紹介できないと思っていたのも事実。2022年も終わりになってご夫妻のおだやかなお人柄とともに笹渓谷温泉を思い出す。




遠くなっていく昭和の名残のような場所だけど、四国の大切な1ページとして記しておきたい。
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