howatto(伊豆田裕美さん)さん、北島大進さん(ブーランジェリーコパン)は食材をおいしさに変える冒険家だ。伊豆田さんは中徳島町でシフォンケーキやビスコッティなどの焼き菓子を、北島さんは徳島市西船場でパン(国産小麦、全粒粉、ライ麦など)をつくっている。
どちらも創業して2〜3年の方だけど県内ではここのでなければと根強いファンが支えている。コロナ下であっても着実に歩まれているお店だ。
共通点は食材を大切にしていること、食品メーカーや研究所での経験がおありで食材の調理を科学の視点で見ていること。
食材を厳選しているというのはどこでも売り文句だが、実際に風味に反映していながら、そのことをうたっていないのには理由がある。
食べればわかるから。また稀少な食材は枯渇するリスクがあることを知っているから。
howattoではプレーンのシフォンケーキが食材そのもののおいしさを提案しているし、あこ天然発酵の酵母を使うコパンの食パンは流行とは無縁の小麦を噛みしめる歓びを感じさせてくれる。それは一億総グルメ時代に原点の魅力をあえて伝えようとしているかのようだ。
このおいしい生地の上に、地元を中心とした季節の素材を大胆に使ってみせる。それがまた驚きなのだ。
(食べてしまったあとで「しまった」と思ったので写真はないが)コパンではマリトッツォをいち早くつくっているけれど、大手の商品とは比較にならない風味のようだ(価格も大手の2倍以上なのだが、食べた人は必ず再訪するという)。
金曜日のみ営業のhowattoを昨日訪問すると、スイカのシフォンがあった。
(商品名/紅茶とスイカのシフォン)

佐那河内村の方からみごとなスイカをご提供いただいたという。しかし焼き菓子にスイカ?と思ってしまう。さてどんな仕上がりかは帰ってからのお楽しみとして。
さらに佐那河内産のスダチ(さなみどり)、阿波すず香、ゆずを使用している、とある。
冒険家というのは菓子ともっとも相性が悪いスダチ類を使おうとする点だ。
さなみどりは、ぼくの知識が間違っていなければ日本で1軒だけの生産者(大仲さん)がつくっている稀少なもの。いや、稀少なだけでなくこれを知ったら料理人はたまらないだろうと思える食材。
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さなみどり すだちから生まれた豊かで潤う香酸柑橘 店内は秋の素材がお目見えしている。

大きな実が入った栗はディスプレイにも使っているが、現在仕込み中というものだそう。
栗の出所は福原純子さんが営む有機農園小七郎さん(上板町)。
小七郎さんの野菜や果実は有機だからどうだ、というのではない。形式的な安全性(有機JAS認証)だけではなく、食材としての磨き上げが高い次元に到達している。不思議なのは生命力の強さを感じる(色艶が良い、見映えがするなど)のに、人間が食べておいしいという点だ。なにか植物はそれをつくる人の思いを感じ取って(感応して)人間に生命を捧げている、というと神秘的になりすぎるけれど。
以前に玄米を分けていただいたが(うちでは炊飯の前に精米して五分づきで食べる)、米の粒のふくよかさはこれまで見たことがない(味わったことがない)ものであった。ただし手間をかけるため反収は驚くほど少ないという現実がある。
howattoさんでは小七郎さんの食材の可能性を菓子として使っている。近々小七郎農園の特集を行うそうだ。この栗も尋常ではない立派さだが、これが今秋の菓子としてお目見えする日も遠くないだろう。
さてと家に辿り着いた。
鼻腔までを含めた身の回りと身体の無害化(コロナ下のルーティンで10分以上はかかる)ももどかしく、紅茶を入れてみた。
生地は紅茶だが、やはり生地がいい。
耳たぶをさらにやわらかくしたかのような限りないやわらかさ、しっとりとしたふくらみ感。
そこにスイカの果実がしたたかに存在感を放っている。
スイカやほとんどが水分なので菓子にどのように応用するのか?
その答えが紅茶(アールグレイ)とスイカとされたのだろう。
感覚的に表現すれば、紅茶の風味がスイカを活かし
スイカの風味が紅茶の存在を際立たせているといえる。
この組み合わせはどのように見いだされたのだろう?
(味覚の合わせには何らかの科学的な根拠がありそうである)


この商品、9月10日の店頭のみの再現だろうと思った。
予感がしたのでほかのお客様のことを考えて1個だけ買った。
それを家で小さく切り分けてスプーン1個ぐらいだけど味わって食べたのだ。
(自分だけが独占してもうれしくないだろう)
味わった体験を言葉に置き換えるのはむなしくなりそうだけど
ここに書いていることが心の動きといえば十分だろう。
ここでは素材も来店客も一期一会で季節と人を結わえていく場なのだ。
howatto
https://howatto.jp/ブーランジェリーコパン
https://www.instagram.com/minnano.copan5.51/追記 店内の感染対策について
どちらのお店も感染症対策は万全で模範事例だ。
コパンさんではCO2センサーを目に見えるところに設置されている。
howattoさんで許可をいただいての計測はご覧のとおり500ppmの前半。
野外が410〜450ppmなので外と変わらないほどだ。

実際にあちこちで許可をいただいて計測しているが、ロスナイのような全熱交換器(デルタ株は全熱交換器+4〜5万円クラスのHEPAフィルター空気清浄機が対策の要)がフル稼働しているオフィスで人数制限をしているところでは600〜700ppm程度、一般的な出勤状況だと800〜1000ppm程度が多いようだ。数値が下がれば眠気も減るので生産性は上がる。真夏の熱波も真冬の換気も窓開け換気と違って快適に行えるのがロスナイ。そのロスナイを使って24時間換気を行うことでコロナでの安全の目安としている700ppmを越えないことを啓発している。
全熱交換器の導入は、コロナに限らず感染症対策や快適な環境の提供、省エネルギーの3つの利点から費用対効果が高い。HEPAフィルターがないのに高価な空気清浄機(5万円以上の海外製など)やら実空間での効果が疑わしくむしろ体調不良の原因となり得るイオン(ナノイーやらプラズマクラスターなどの名称のオゾン)吹き出し装置、抗菌コーティングなどを導入する資金があったら日本製の全熱交換器を導入すること。デルタ株に対して何が有効か、何が対策の要諦か、情報の取捨選択と科学的な根拠に基づく理知的な判断ができなければムダなものを買わされてしまう。