中学の頃は友人たちはビートルズやカーペンターズ、BCRなどに夢中だったが
ぼくはヴィラ=ロボスの5つの前奏曲や田園、ダニーボーイなどの英語の民謡が好きだった。
できたばかりの私立中学に入学したぼくは学年が7人の中学生活に突入。
7時7分小松島駅発の快速列車で徳島方面へと向かう。
踏切は人力で上げ下げしていた時代、
哲朗とメーテルを乗せて走るあの列車のように
阿波池田行きの12両編成の普通列車がいつ果てるともなく踏切を横切っていく。
バスに乗れば車掌が切符を切っていた時代。
誰もが夢を見ていた。
中学には五藤光学の20センチ屈折赤道儀を備えた天文台や
英語のネイティブの発音を個別に聞かせるLL教室があった。
音楽の授業ではピアニストのような強弱やアッチェレランドを使った芸術的な伴奏をしてもらった。
一人ひとりが英語の歌をうたうことがあって、
ぼくは迷った挙げ句、アメリカ民謡の「赤い川の谷間」を歌ったことを思い出す。でもダニーボーイは好きだった。
ダニーボーイの歌詞には英語の古語や文語的な表現が散りばめられているが
意味を取るのは中学生でも難しくはない。
ぼくは、故郷に恋人を残して去った男を待つ女性の歌だとずっと思っていた。
確かに女が男を待つ状況は正しい。
それが母親が息子を待つ歌だと知ったのは近年である。
ここは鳴門海峡南部の紀伊水道に面した鳴門市里浦地区。
鳴門金時のブランドで知られる甘藷の産地、その裏作として大根でも知られる。
海は鳴門わかめの産地。
陸と海を区切る渚の両側で大地の恵みを得ている希有の地区。
温暖で風光明媚で鳴門は京阪神の人たちの終の住処になりえる場所。
だからエクシブも瀬戸内海を見下ろす北灘地区の丘の上にある。
食材も甘藷、大根、レンコン、鳴門鯛、鳴門わかめと全国的な産物がずらりと並ぶ。
But come ye back when summer's in the meadow...

いまは春の気配をかすかに従えた冬の光景だけど
里浦の大地が甘藷の緑で覆われる頃には―。
鳴門金時、めしあがれ。
posted by 平井 吉信 at 21:08|
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山、川、海、山野草