子どもの頃、勝浦川の下流は学校の帰りに通りかかる。
江田の潜水橋とその上流の堰が定番の遊び場。
(勝浦川はこの下流の堰が潮止め堰となる)
堰を降りる水に身体を預けると
表面と水底を行き来する縦の渦(ストッパーという)に揉まれるのがおもしろい。
川底まで沈んで水面に戻ることを繰り返す。
ここで川の性質を知らなければ溺れる。
川底に引き込まれると恐ろしくなって
流れに逆らって上へ上がろうとする。
ここでパニックになって水を飲んでしまうのだ。
子どもは知っている。
川底を蹴って川底を水平に移動して縦の渦のない場所から出ればいい。
だが増水して水量が多くなればいつもの常識は通用しない。
きょうは堰下りは止めておこうということになる。
川で泳ぐ子どもはそんなことも自分で判断していた。
ある日、堰で泳いでいたら婦警に補導されてしまった。
後にも先にも補導されたのはこれが初めて。
確かに遊泳禁止区域なのかもしれない。
数年前に上勝町で水難事故が続き
町が遊泳禁止としたことがあった。
(特に危険な流れではない箇所)
小さい頃から川に親しみ川を知らなければ
どんな場所でも溺れてしまうだろうと思った。
このブログにも何度か書いたが
増水した那賀川で叔父を亡くしている、
さらにとても親しい人を海部川で亡くしている。
前者は洪水、後者は鉄砲水によるもの。
だから川の怖さも同時に知っているつもり。
勝浦川はダムができて水量が減り水質が悪化した。
それでもJAの直売所「よってね市」に立ち寄る際は足を伸ばしてしまう。
(ここは野菜が安いという点では全国有数ではないだろうか。肩に食い込むほど野菜や果実を買ったのに千円でお釣りが来ることもある。JAの手数料が安いのも理由のひとつだが)
よってね市から北へ潜水橋を渡ろうとすると
河原一面にオニユリが咲いているのを見かけた。

オニユリが咲く小径を歩いてみた

(映画のロケ地に使えそう。水戸黄門とか、徳島のまんなかで藍を叫ぶとか)
今年の夏休みは少し違って見えるかも

友釣りをする太公望

横瀬橋上流から屈曲点まではかつて草は生えていなかった。
ダムは小さな洪水は止めてしまうため河原の生態系がおかしくなる
(大きな洪水は放流によって人為的な災害を引き起こすこともある)

ユリに混じってヤブカンゾウ。花を食したり漢方薬にすることもある

河畔の木 日常的に見たことがあるような

蝶や玉虫も飛んでくる




対岸の岩まで泳いで岩の上でひなたぼっこをして冷たい水に慣れていった。

でもいまは川の水がぬるい。
あの頃は長く川に浸かっていられなかった。
水の透明度は高く顔を付ければ対岸の岸まで見えた。
冷たい湧き水があった。
ダムがなかったので水が出ては川底を洗い流す新陳代謝があった。
ダムができたのでシルト質の土砂が川底に堆積するようになった。
これらのことがすべてアユのエサとなる苔に影響する。
もはや勝浦川はダムから上流域を除いておいしいアユは得られない。
横瀬立川のアユは日本一という
アユ博士の谷崎鱗海さんがいらっしゃればなんとおっしゃるだろう。
(親父によればそういっていたそうだが、果たして博士はそうおっしゃったのか?)
昔は良かったと嘆くのが本筋ではない。
コロナ禍を逆手にとって生態系を復元(再自然化=ミチゲーション)できないかと考えているのだ。