2025年04月29日

ニオイスミレ上のハナアブ


風の強い朝、花期が終わったあとのニオイスミレの夏葉になっていく4月下旬のこと。ハナアブが葉のうえで休んでいる
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拡大してみると、戦隊もののヒーローのような面構えである。羽根をたたむと足が伸びて地上を駈けるモードになり、空を飛ぶときは足が短く折れ曲がって羽根が伸びて空を飛ぶ、という昆虫ヒーロー「ハナアブロー」をマクロレンズで拡大してみる。
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次の石森プロの作品はこれかな?

(撮影/フジX-T5+XF60mmF2.4 R Macro)
posted by 平井 吉信 at 12:38| Comment(0) | 家の庭

消費税率を下げる/なくすは良い政策だが、すべて同じ税率(5%/0%)でなければならない


立憲民主党が消費税を1年間、かつ食料品に限って0%とすると発表した。本ブログでも消費税減税/廃止が、国民も事業所(個人・中小企業・大企業)を問わず、もっとも効果的な施策と考えて提唱しているが、これは禁じ手である。

前回の公明党提唱の軽減税率(8%と10%の複数税率)で流通は混乱し、挙げ句のはてにインボイス制度が導入されて多数のフリーランスや小規模事業者が廃業するという副作用まで起こった。公明党は弱者いじめの政党の印象が定着した愚策であるが、今回の立民も同様の愚策である。

このような理念なき政策をばらまきという。給付金もばらまきであるが、理念がある給付金として、国民の幸福につながる諸施策との相乗効果で生活への安心を確保しつつ、いまお金が必要なときだから給付も位置づける、というのなら愚策とはいえない。

ところがこの国をどのように立て直すのかの理念と方針がないままに実施しようとすると、国民の目にはばら撒き(どうせ所得税で回収されるんでしょう)に映る。

立民のこの政策も選挙目当てとしかいいようがない。社会を知らない青臭い匂いがぷんぷんする。1年間だけの税率のために、流通や企業の総務、取引の現場がどれだけ混乱するか。食品と雑貨を扱う小規模店にとってはレジ業務の運営が回らずお手上げとなる。おそらくシステム改修に補助金を当てる政策が提案されるだろうが、1年後にはまた元に戻す。システム改修費がまた必要となる。→ 官民ともに無駄遣いを強いる愚策。

これならまだすべて5%(恒常的もしくは0%まで下げる暫定扱いなど)がましである。この政策の良いところは、誰も不利にならず、不公平にもならないというところである。消費税負担は生活者だけでなく中小企業も負担になっている。赤字の法人は少なくないが、売上1億円、経費1.2億円(減価償却前)の赤字企業でも、数百万円の消費税が課税されると経営が追い詰められて雇用を守れない、破たんなどの怖れがある。

最大多数の最大幸福でもある消費税率を下げる(撤廃する)財源はどこに?という答えは、内需拡大による税収(所得税)で補えるはずである。社会実験としてやってみる価値はあると思う。
posted by 平井 吉信 at 12:19| Comment(0) | 生きる

2025年04月26日

スミレを見る愉しみ〜交雑種のスミレ〜


このブログでは「交雑」という言葉の頻度が多い気がする。人類進化を語るとき、ホモ・サピエンスとホモ・ネアンデルターレンシスの交雑とか、デニソワ人とネアンデルタール人の交雑などと使っている。現代の人間社会でいえば結婚、動物でいえば異なる種が交尾して子どもをなすこと、植物でいえば、虫などが媒介して異なる種で交配して親と異なる株が生れることである。

ただし、スミレの場合はスミレそのものを見分けるのが難しいうえ、それが交雑するとさらに難易度が上がる。特に近いもの同士の場合はなおさら。

野山で見かけた個体が記憶のなかのパターン認識で「おや」とアラートを発するとき、それは自然界の実験に立ち会っているようで、多少のときめきとわくわくを感じている。

いずれにしても、撮る(写真)だけであって、採る(持ち帰る)はなし。そこにいてこそのスミレちゃんで、その場にいることが幸せ。それは個体の問題だけでなく、その空間全体(生態系)にも影響がある。シカなどの食害が問題となるのは生態系を破壊しているからである。


見かけ上の交雑?
交雑例のなかには怪しいものがある。例えば、高鉾山で見かけた個体。
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スミレに詳しい人、これはおかしいでしょう。葉がナガバノスミレサイシン、花がタチツボスミレ系といった趣き。こんな交雑はある?

何がおかしいかって、例えば、野球で縦縞のユニフォームとグレー無地のユニフォームが交雑したとする(生物でないからしないけど)。グレー地にストライプが薄く入ったものになる、といえば交雑がイメージできる。ところが、左側がストライプで右側がグレー無地という現れ方はしない(キカイダー?)。この個体はそれに近いので変なのである。

おそらくは葉だけのナガバノスミレサイシンに、タチツボスミレ系が偶然に居合わせてしかも自分の葉は見えないところに小さくある、などの場面ではないかと。


タチツボスミレ×ナガバノタチツボスミレ
これは徳島県内で比較的見かけるパターン。最初に見て驚いたのは草丈。いつもは寝そべって撮影するか、地面すれすれにレンズを向けるのに、この個体はしゃがんだ目の高さに近い。頭が良い父と美しい母の間に、頭が良くて容姿端麗な子どもが生まれるというパターンか(その逆が出るとちと大変。大谷夫妻の子どもはどれだけ大きくなるのかならないのか)。特徴が強く表れて両親より優れた(この場合は草丈)性質となるのを交雑強勢という。とくしま植物園の斜面でもときどき見かける
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サクラスミレ×スミレ(Viola mandshurica)
昨年の四国カルストで見かけた個体。ここは四国で唯一サクラスミレが自生する場所なのだけど、これは交雑個体。葉に翼を持つスミレの特徴を持ちながら形状はサクラスミレ的。交雑種としてはわかりやすいほう。
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シハイスミレ×スミレ(Viola mandshurica)
今年見かけたスミレではこれが印象的だった。葉はシハイスミレ、花弁は濃い紫で、ピンク系統のシハイスミレではなく、スミレ(Viola mandshurica)の色彩の影響が濃い。周辺を隈なく探すと、シハイスミレ、スミレ(Viola mandshurica)の交雑しない株が多数あり、そのなかにいくつか交雑株があった。それにしても美しい個体で、ぼくは1時間以上この個体の近くで寝そべって見ていた(誰もいなくてよかった)。ホウフスミレという和名もあるようだ。
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花弁の拡大。側弁の根元には毛がある
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上から見ると葉はシハイスミレ的。翼はないがスミレ(Viola mandshurica)の味付けも感じる
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近くにあったスミレ(Viola mandshurica)。葉には翼があるが、形状が大きい(強勢化を感じる)。この個体は交雑個体(ホウフスミレ)とスミレ(Viola mandshurica)の交雑ではないか
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交雑を探しているのではなく偶然出会うから、いとおかし。それをスミレ道楽というなかれ。生きていること、生きていくことへの共感とでもしていただけると幸いです。

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余談だけど、清少納言と紫式部が合体して、「枕源氏草子」を書いたらどんな文章になるだろう。宮中のあれやこれをエッセイ風に入れながら相変わらずの惚れた腫れたの世界と入り交じっていくのだろう。AIなら創作しかねないな。

いずれのおんときにかにょうごこういあまたさぶらいけるなかに やうやうしろくなりゆくやまぎわ むらさきだちて むらさきのうえといひたる いとおかしくあはれなり(そんなことないわな) 


タグ:スミレ
posted by 平井 吉信 at 11:10| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2025年04月19日

ポータブルラジオのベストは東芝TY-HR4〜使ってわかる良さ、名機ソニーICF-801に代わる選択肢〜


ソニーICF-801の代替機を探して
かつてソニーのポータブルラジオICF-801という機種があり、その良さを紹介したところ、(それがきっかけがどうかわからないが単独記事としてはアクセス数が極めて多かったのは確か)名機として定着した。

メイド・イン・ジャパンの至福のラジオ〜ICF-801〜
http://soratoumi.sblo.jp/article/57853049.html

このラジオは、ソニーブランドとして秋田県の十和田オーディオ(株)で設計、製造された正真正銘の日本製であり、なによりその音質が良かった。JALジェットストリームの冒頭で流れる「ミスター・ロンリー」のストリングスの深々とした低域が夜のしじまに漂うと安らぎを感じさせるひとときとなった。このラジオは、高級サルーン(いまは使わなれない言葉だが)のドアを開閉した際のような上質の操作感というべき、イルミネーション点灯後に温かみのある光が徐々に暗くなるたたずまいの美しさもあった。

ICF-801は2009年に発売されたが、やがて生産中止となり、後継の機種もそれに準じる機種も発売されることがなかったため、いまでも惜しむ声が聴かれる。Amazonで入手できたのは2015年ぐらいまでで、新品で6千円程度の機種が中古で3〜5万円の高値を付けたこともあった。

現時点で入手できるポータブルラジオを店頭で聴き比べた結果
そこで、ICF-801の後継を探すべく、電波状況が異なる数店舗の家電量販店の店頭で比較を行い、もっとも優れていると判断したのが東芝のTY-HR4だった。
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東芝TY-HR4は2022年5月の発売で、どこの家電量販店の店頭で4〜5千円で入手できる点で申し分ない。東日本震災時に店頭から数か月ラジオが消えたことを覚えていらっしゃるだろうか。潤沢に供給されているときに確保しておくのが災害対策の基本と思っている(2020年4月の緊急事態宣言時でもうちにはマスクの備蓄があったので困らなかった)。

さて、このラジオを自宅の約10機種と比較した記事を前回に書いた。比較対象となったのは錚々たる機種であったが、東芝のこの機種はそれらと比べても、日常の生活場面でも災害時でもまっさきに推薦できると確信できたので改めて紹介する。
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防災用のラジオ おすすめの3機種(2025年版)。ラジオは普段から使ってください 
http://soratoumi2.sblo.jp/article/191298911.html

このラジオの長所や災害対応の利点については先の記事をご覧いただくとして、数か月使ってみてわかったことを追記する。以下の特徴は同価格帯のライバルにはない長所である(Webのレビュー等でも触れられていない)。

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使い込んでわかる東芝TY-HR4の良さ
(1)音質の良さ
・店頭では地味に聞こえるかもしれないが、自宅で聴くととても心地よい。コンパクトながらやや厚みのある筐体はスピーカー背面での音響効果として貢献している。
・9センチ口径のスピーカーユニットはフルレンジとして適切な大きさで中域を中心に低域と高域が均衡している。
・筐体の剛性が高い。手で持った感じでもそうだが、音量を上げてもびりつきはない。
・音質の特徴を、オーディオマニアがわかるように表現すると、スペンドールやロジャースなどイギリスの小型2ウェイのBBCモニターのように、声を中心に忠実な表現をする、音量を上げてもうるさくならないため長時間聴ける。この点は多くの人が賛同していただけるだろう。

(2)操作性の良さ
・電源スイッチ、バンド切り替え、チューニングダイヤル、音量調整の4つのダイヤルが独立しているので操作しやすい。切り替えスイッチが左-中-右の3択だと中が操作しにくいが、本機は左-右で電源やバンドセレクトを行なうので暗闇で手探りでもやりやすい。
・音量調整がしやすい。ボリュームツマミが独立しているだけでなく、急激に音量が上がらないカーブなので微妙な調整がしやすい。特に夜中に小音量で枕元で聴く際などに重宝する。大音量にする際も回転角がリニアで大きいため調整しやすい。
・黒のラジオと比べて前面が明るいシルバーの本機は暗がりでもどこにあるかがわかりやすい。
・薄型のラジオは立てたときに倒れやすいが、本機は適度な厚みがあるので安定感がある。
・電池ボックスの節度を持った開け閉めのしやすさ。手が痛くなることもなければ、不意に空いてしまうこともない。
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(3)防災にも普段使いにも便利な機能
・市販されているラジオのなかでもっとも長い電池寿命
・LEDライトの装備
・移動の際に手が空く肩ベルト付き

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以上のように防災ラジオとしても満点であるが、普段使いとしておすすめしたい。次期モデルの改良点候補としては、選局の際にボタンを押すとバックライトが数秒点灯する仕様であれば、薄暗い場所での選局がしやすくなる。これは実用性が高いので販売価格が上昇しても望みたい改良箇所。

普段使いのラジオとして、ついつい点けてしまう心地よさ
インターネットのラジオアプリでは、聴きたい番組をねらって聴く場面が多いと思うけど、「ラジオでも点けるか」とスイッチを入れた時点で、聴きたかったことや知りたかった情報などに遭遇することがある。初めて知ったことなど情報の質の高さはテレビにはないもの。ラジオを付けなければこの情報に遭遇しなかったのかと。

そんな偶然の出会いはついつい付けたくなるから。AMのニュースでは聞き取りやすさ(切迫感のある情報こそキンキンしない音声で聴きたい)があり、FMの音楽番組ではついつい音量を上げてしまうけど、キャビネットが余裕を持ってスピーカーを制震しているので聞きこんでしまう。

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ところで、Amazonでは未だに旧機種のTY-HR3(2018年10月発売)が掲載されていて、レビューを見ると、音量を上げるとビビリが発生するとあるが、新型のTY-HR4(2022年5月発売)ではそれはない。HR3では400時間だった乾電池寿命(単1乾電池×3本)がHR4では450時間に増え、デザインも精悍ですっきりとしたものに変化している。些細なところでは640グラムから635グラムとわずかに軽量化している。これらのことから東芝は内部回路や細部の設計をブラッシュアップしていることがわかる。HR3もそうだったが、アナログポリバリコンのような複雑な回路ではなく最新のDSP回路による部品点数の削減は経年変化が少なく、しかも価格を上げずに良い方向に貢献している。ラジオの型番だけ変えて値上げ発売するメーカーが多いなかで、モデルチェンジで完成度を上げていく東芝の姿勢は評価したい。

ICF-801と比較すれば、オーディオ的な音質はソニーが上回るが、東芝も実用上十分。どちらのラジオも遠距離や微弱電波の放送局を狙う機種ではないが、デジタル処理の利点で東芝の受信音が静かに聞こえるので聞きやすさは東芝が優る印象(ビート音などがないSN感の高さ)。

このラジオは、つい聴いてみたくなるのでラジオでも聴いてみるか、という生活から見えてくることがありますよ、と締めくくりたい。

東芝 TY-HR4(東芝公式Webサイト)
https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/pro_radio/ty-hr4/


追記

東芝の同クラスのラジオは選択肢が豊富であるが、そのなかで以下の付加機能の機種が付かない本機(AM・FM/モノラル仕様)を勧める理由がある。

ステレオ仕様…電池寿命が短くなる、価格が変わらずスピーカーと駆動系が2個必要となるのでユニットの質が下がる。電界強度が十分でないときステレオ受信時にノイズや歪みが気になる。ステレオと比べてモノラルのほうが音像の実在感がある

プリセットチューニングの機種…放送局を登録できるのは便利なようで、普段聴かない放送局を探したり、エリアが変わったときに選局が不便。災害時は次々と周波数を変えてみる場面が出てくるはずで、その際のチューニングがダイヤルを回すだけの本機と違って面倒でメカに詳しくない人は操作できないだろう。マニアックな愉しみとしてはチューニングダイヤルを回す操作もあるのでは。

短波受信ができる機種…本機の価格帯で短波の受信は困難。できたとしても短波放送は縮小傾向にあり、インターネットが接続できる環境下では不要。遠距離受信が目的のBCLマニアなら中華製を選ぶ時代でマニア心をくすぐる機種が発売されているのでそちらをどうぞ。ただし防災の観点と被災時の乾電池の入手容易性から中華に多い独自規格のリチウムイオン充電池専用機は不利であり、衝撃を受けると発火のリスクがあってリチウムイオン充電池仕様は避けたい。電灯線と乾電池仕様にはそのような怖れは少ない。

タグ:ラジオ
posted by 平井 吉信 at 11:43| Comment(0) | くらしとともにあるモノ

2025年04月18日

山の上にある朝立彦神社(徳島市飯谷町) なのに海洋民族との関係性?


朝立彦神社(あさだてひこじんじゃ)は徳島市でもっとも南にあり、もっとも高い標高(336メートル)にある神社である(ウィキペディア記載の当神社の標高700メートルは誤り。また、神社名を誤記するなど当神社の情報が正確でないWebサイトが多いことにご注意→ 地元住民に確認したが、「あさだてひこ」以外の呼び方はしないそう)。

県道11号線から勝浦川に架かる長柱(なごしろ)の潜水橋を渡るとやがて二股に差し掛かり、左の道を上がっていく。かなり上がると左右の分岐を左に進み、車道の終点に車を数台置ける(県道分岐から3.5km。道幅は広くないが危険なほどではない)。終点からは参道(山道)を歩くことになる

鬱蒼とした森を抜けて山道を登っていく。電灯がないため太陽が傾くと足下が暗くなるが、自然のなかに置き去りになった自分を感じることができる
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やがて最初の鳥居と石段が見えてくる
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次の鳥居から社を仰ぎ見る
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登り切ると古い神社が迎えてくれる
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ご神紋
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平石山方面の森へと足を踏み入れようとすると、徳島毎日新聞社による石碑がある。徳島を代表する神社選という趣旨で設置されたのだろう
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神社の右手に深い森が深々と横たわる。尾根道をたどると標高648メートルの平石山まで続く
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森の静寂、心が静まる瞬間
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さらに進むと山の神様(山神社)が鎮座する
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山神社から森を南へ横切ると開けた場所に出る。地元の子どもらが祭りなどで相撲を取った場所。神聖な森の氣に打たれながら子どもらの歓声が響いていた時代があった
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相撲場から神社へと戻る小径をたどれば南の視界が開けて、眼下に勝浦町、遠くに羽ノ浦町、阿南市、橘湾が眺望できる岩の上に出る
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那賀川とその沖積平野。右手のビル群は日亜化学(阿南市)
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見晴岩の上部にはお亀の池がある
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お亀の池は直径40センチ、深さ70センチ程度の水たまりとのことだが、海の近くでもないのに潮の干満で水位が動くという。干ばつの折には村人が雨乞を行なった
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お亀の池は岩の下にあり、隙間から見ることができる。お亀に小石などを投げ込むと暴風雨になると言い伝えられ、村人が汚されないよう守ってきた歴史がある。この岩は蓋の役割をしている

見晴らし岩の割れ目をお亀の池と勘違いしているWebサイトもあるようだ
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お亀池から上に神殿の石垣が見える。見事な石積みで一見の価値がある
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境内にある小屋は数十年前まで地元の子どもたちが祭りで寸劇を行なっていた場所。演目は水戸黄門などがあったという
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朝立彦神社のご祭神は「和多津見豊玉彦命(わたつみとよたまひこのみこと)」(看板いわく阿波誌の由来から)。これは海の神である。山上なのになぜ海の神なのか。また、飯谷村(いいたにむら)護王大権現の別称もあるという。豊玉彦は山幸彦(火遠理命)が結婚した豊玉毘売の父にあたり、山幸彦は神武天皇の祖父にあたる。いずれにしても、この神社が海の神と深い関係を持つことについていつか考察してみたい。それには地学的な分析が不可欠と思う。

勝浦川を少し遡れば、事代主を祭神とする生夷神社(朝立彦神社から車道で5.7km、直線距離では南東へ1.6km)がある。えべっさんは釣り竿を持つ。やはり海から離れているのに海人の匂いがする
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神社の左手には細長く平らな尾根が横たわる。沿道には桜や椿が植えられている
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日当たりのよい斜面に咲いていたノジスミレ
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台地の果てには展望台があり、飯谷の勝浦川、周辺の集落を見下ろせる
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森を抜けたところに明るく開けた台地があるとは想像できないだろう。長く平坦なこの場所はやはり馬場(馬の練習)として使われていたのではないか
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朝立彦神社は旧飯谷村の鎮守の森であるとともに、海人との結びつきが連想される。そんな不思議な山上の神域をあとに森を下っていく
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朝立彦神社は延喜式神名帳に記載された由緒ある式内社である。旧飯谷村を護ってきた歴史を刻み、森にたたずんでいる。
posted by 平井 吉信 at 00:39| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2025年04月13日

川の水流に耐えて生きる ケイリュウタチツボスミレ


西日本の数カ所でケイリュウタチツボスミレの自生地が知られているが、徳島県内にもある。どこも川床に近いところに自生するのは共通だが、那賀川の基本高水のピーク流量11,200トンは、吉野川の24,000トン(全国1位)には及ばないものの大きい。なにせ降水量の多い地域として、屋久島、四国東南部の山中、紀伊半島の大台ヶ原などが知られるが、那賀川の源流域にも近い四国東南部の魚梁瀬地区は年間4,000oを超える雨量が観測される。かつて1日の降水量としては那賀郡木頭村(現那賀町)の1日1,114oがあった。那賀川は剣山南斜面と、高知県境の多雨地域の雨を集めて豊富な水量で急流となって下る。地図を見ると那賀川の河口部は口を尖らしたように突き出ているが、ダムができる前のすさまじい土砂の供給を物語る。

ひとたび大雨が来れば増水して水に浸かる場所に生えるスミレがあると知ったのが数年前。足で歩いて自生地を見つけて以来、見に行っている。そのスミレは、ケイリュウタチツボスミレという。

最初に見たとき、あっと声が出た。当時はスミレに詳しくなかったが新種のスミレと思ったほどたたずまいが違っていた。人混みに紛れてぬるっと存在する宇宙人のようであった。

2025年春はスミレの仲間たちにとって当たり年のように感じる。これまでに見られない群生が見られる場面に遭遇している。そこで今回も愉しみにしていたところ、やはり普段より多く見られた。

水面から離れた岩場に咲いていた個体。ただしここも大水のときは浸かる場所だが、生息環境はやや乾燥ぎみ
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葉の様子
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同じ環境でスミレ(Viola mandshurica)も顔を出す
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苔マットがあることからある程度湿気を帯びていることがわかる
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ツツジが川面に突き出て咲く
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水面まで3メートル、生息場所まで2メートルの崖の斜面に咲いている。近づくことはできないし、落ちたら急流に流される場所。生息場所が思い描けると思う
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足下を確保しながら水面に近い場所へと降りていくと斜面の苔マットに小群落があった。花弁はいずれも白に近い淡い薄紫色。
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水辺に近い岩場でシロバナの個体。シロバナは全体の5%ぐらい
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横から見ると花弁が流線型になっていて流される対策をしているのがわかる
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環境がわかる写真の例。背景にピントを合わせている
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垂直の崖に咲いている

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苔マットは居心地が良さそうで多数の個体が自生する。ただし株は密集せず点在する。生息環境から得られる養分が限られているためだろう
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主な場所は水面から上がった岩や土砂の斜面に苔が覆っている場所など。日向を好んでいるようには見えず、どちらかといえば半日陰かも。場所によってはちょっとした一雨で水没する水面近くの岩棚に咲いているのもあった。

葉にピントを合わせている
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じっくり観察すると、水面から高い場所では葉が厚め(海岸型のように)にも見えるが、苔マットや水際のものは葉がしなやかに見える。また、水辺に近いほど流線型に近づいているものもある。

研究される方のために、花弁だけでなく葉や環境までも撮影してある。小さな被写体と背景を説明するときは、小さなセンサーのカメラのほうが有利だ(フジX20)。植物の写真を撮っていて感じるのは、被写界深度を稼ぎたい場面が多く(よってフルサイズは選択肢から離れる。昆虫を撮影する人がマイクロフォーサーズを選択するのもわかる)なるべく絞りたい(f5.6以上、できればf8〜f11)。一方でISO感度を上げたくないし、風やカメラを構える人間のブレ(大概は悪条件が多く三脚を持ち込めないか立てられないか、機動性が落ちる)を防ぐためにシャッター速度を上げたいし回折現象も回避したい。これらの相反する要素を満足させるのは、スミレぐらいの草丈ではAPS-Cの標準から中望遠マクロ(換算40〜90o)と、接近できる広角系レンズ(換算24〜35o)、センサーは24〜26MPあれば十分。ただし最新の40MPは画像解像性とトリミング耐性が高く、画像エンジンの進化で暗部のSNも気にならない。撮影の現場は岩肌で足場が悪く、泳ぎの達人でも長靴を履いて服を着たまま急流(かつ深い)に流されると危ないので要注意。
posted by 平井 吉信 at 12:46| Comment(0) | 山、川、海、山野草

2025年04月12日

麁服(あらたえ)の里、三木家の春(美馬市木屋平)


美馬市内の企業を訪問したときのこと。協議が終わって雑談をしていたとき、美馬市出身の藤島博文さんの絵画展に行って感銘を受けたと話をしたら、その会社の社長が「親戚です、ときどきみなで集まっています」と答えられた。

偶然といえばまだある。目の前で面談している社長をぼくはテレビで拝見して一方的に存じ上げている。それは人助けをされた話をマスコミが取り上げたものなのだが、その映像を見てぼくはこの方が徳が高い人だと直感した。おそらく神霊の支えがなければなしえないと思えたのだ。だから、いつかはお目に掛りたいと思っていたら、偶然にもその機会がやってきた。当時の映像のテロップでは会社員としか出ていなかったし、どこの会社の社員かも知らなかった。その方が社長になられた会社へ仕事で訪問することになるとは。あの映像を見てから20年以上が経過していた2025年春。縁(えにし)は大切にしたいもの。

藤島画伯の絵でもっとも見たいと思っていたのが、木屋平の三木家が麁服を調進するために大麻を栽培する畑である。それも、しだれ桜が咲く季節ということになる。そこで早いうちからこの日は見に行く予定に入れていたもの。

三木家は重要文化財であり、その隣に週末だけ開館する三木家資料館がある。大麻をつくる畑は三木家の前にある。栽培には県知事の許可がいる。種を蒔いて収穫まで24時間の監視が求められるという。葉の1枚すら囲いの外へ出してはいけないとのことで、葉を集めてその場で焼いているのだという。栽培にはおそらく数千万円の費用がかかる。

収穫された大麻は茎のみを使う。その繊維を布にして践祚大嘗祭の儀式に持参する。天皇に即位されるとき、お一人で一晩かけて行なわれるらしい。一生に一度のもっとも重要な儀式で、何人もその儀式の場に入れない秘密の儀式である。

その儀式に使われる麁服(あらたえ)という大麻でつくられた布が儀式の要となる。毎年正月になると、天照大御神の御札を産土神社で求めるが、神宮大麻と書いてある。伊勢神宮の根源の神と大麻はかくも深い関係にある。

その麁服は、阿波の三木家(宮廷の祭祀を行なう忌部氏の末裔)から調進されなければならない。忌部氏は、天照大御神が天岩戸にお隠れになったとき、外で出ていただくために居合わせた天太玉命(フトダマ)の子孫といわれる。麁服は、木屋平の地でつくられなければならず、それも三木家でなければならない。

西洋では、イエス・キリストのご遺体を包んだ聖骸布が麻でできているという。大嘗祭の儀式は新天皇が一晩お一人で儀式を行なわれると聴いたことがあるが、王家の聖なる身体や御霊を包むというのは同じである。天照大御神の御霊が宿る麁服とお過ごしになるのだろう。

三木家は穴吹川を遡り、途中から川を離れて三木山へと上っていく。かつての木屋平村の尾根に近い場所である。徳島市方面からは、佐那河内村→神山町→川井峠→木屋平と進むのが近道である。

車は三木家の近傍の貢(みつぐ)公園に置いて歩くのが一般的。公園内にも花見をする人がいる。
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公園に隣接して三ツ木八幡神社がある。三木家と関係がありそうな名称である
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やがて眼下に麁服の原料をつくる畑、左手に三木家資料館、その奧に重要文化財三木家が見えてくる
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麁服の畑には大麻が植えられるのは、天皇の即位に備える時期のみである。直近では、令和元年、その前は平成元年が即位であったからその数年前から宮内庁からの要請か示唆を受けてつくられていたのではないか。しだれ桜に囲まれて明るい雰囲気である。次の作付予定は当然ながら未定(あってほしくない)。

大嘗祭に使用された麁服と同じ麻糸でつくられたストラップが資料館で販売されていた。国産の麻でつくられた稀少なもので部分的に藍染めされている(1500円)。これが最後の1個だったようで、これもご縁というべきか(当然ながら次の予定はない)。背景紙の紋様は阿波忌部氏の麻の葉文様の家紋のようだ。
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三木家資料館には週末にボランティアの方が順番に担当されているという。資料館内には、各種文献やパンフレットのほか、麁服を織る機械などが置かれている。
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資料館の前には畑がある
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重要文化財三木家住宅は独特の構造を持つという。桜に囲まれてのどかな季節を迎えている。さまざまな角度とレンズで撮影してみた。→ 国指定重要文化財三木家住宅(美馬市Webサイト)

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タチツボスミレまでが気品と華があるような
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居心地が良い場所で公園、神社、三木山、三木家資料館、三木家周辺(麁服の畑)を行き来しつつ数時間が経過。おだやかな春の過ごし方としてはこれに優るものはない。

麁服は麻で紡ぎ、藤島博文さんは筆で描く。高天原はこんなところにあったのではないかと思いつつ、レンズを通して心に刻む2025年の春。
posted by 平井 吉信 at 23:51| Comment(0) | 徳島