2018年01月09日

料理はお客様と料理人との心の共演 気取らないみなみ食堂の和食(日和佐)


ここは日和佐の薬王寺門前、
みなみ食堂は、平成29年12月1日に開店したばかりの飲食店。
のれんには漢数字で三七三と縦に書いてある。
もちろん美波町(日和佐地区)のみなみ。
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2017/11/2017_15120048236585.html
(このところ食べ物の話題が続いているが、ぼくはグルメではない。ただ、食を大切に、それを届ける人のことを伝えたいと思っている)
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昼は、みなみ御膳(1,500円)と週替わりの定食(900円)の2品だけ。
夜は、予約対応で3,000円、4,000円のコース料理のほか、2,000円前後の食事メニューもある。
開店早々に盛況で12時過ぎにランチが売り切れる!という日もあったらしい(地元の目撃情報)。
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開店したのは、東京で和食の経験が豊富な児玉幸司さん、芙優子さんご夫妻。
(昨年末にご結婚されたそう。おめでとうございます)

料理は昆布を中心に出汁をしっかりと取りながら
地元の魚、鶏肉などを素材として用いる和食。
気取った店にしたくないと「食堂」と名付けている。
出される料理は手を抜かないが、
気軽に立ち寄れる場所でありたいとの願いを込めている。
デザートに胡麻のブラマンジェが用意されているのも珍しい。
(みなみ御膳に付いてくる。定食も別途200円で提供)
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ぼくはまだ定食しかいただいたことがないが
ていねいに料理され、美しく盛りつけられている。
お皿にわずかな痕跡すら残さず完食してしまう。

きょうの定食はぶり唐揚げ甘酢あんがメイン。
レモンやピーマンが乗っているのが冒険心。
子ども連れで3世代のお客様が来られたとき、
「ピーマンはだいじょうぶですか?」と声を掛けたそう。
親としては子どもが残したら自分が食べるつもりだっただろう、
「大丈夫です」と答えられたとか。
ところが、子どもは完食してしまった。
「おいしい!」
家ではピーマンを食べたことがなかったという。
これには親が驚いてお礼を言われたとのこと。
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思い起こせば、このような店は海部郡内になかったのだ。
(皿鉢料理、濃い味付けで量は満足できるという店は多いのだろうけど)。
繊細ななかに食材の豊かな海をつくりだす創作料理、
しかもメニューは絞りこんでいる。
(木曜定休だが食材の調達が難しいときは不定休で休むこともある。お電話でご確認くださいとのこと)

飲食店に来られたお客様には3つの表情がある。
来店して注文したあとの待っている顔、
食べているときの顔、
そしてお金を払うときの顔。
それがだんだんとほぐれていくのがわかる。
それが料理の力であり、お迎えする人の気持ち。

お客さま一人ひとりに目配りをしながら笑顔で声かけをするという
気配りやおもいやりが込められている。

飲食店は、神様であるお客様を店がおもてなしをする場ではない。
(ぼくはそう思っている)
料理をされる人が気持ち良く料理できるようお客として気配りをして期待する。
その気持ちを察して料理人が誠心誠意応える。
そこにうんちくも能書きもSNSも要らない。

もし、あなたがそんなお店に行ってみたいと思うのだったらおすすめです。
ただし、注文を聞いてから作り始めるので少々時間はかかります。
この写真の定食も鶏肉をオーブンに入れたのは注文後。
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そして、作りたてが音を立てて運ばれてくる。
料理とは、提供する人といただく人の共演だと思う人は
きっと何かを感じるでしょう。
(もしこれが東京なら行列ができる店になっていたでしょうに、あえて日和佐で開店されたこと。移住コーディネータの小林陽子さん、やりましたね)

おふたりの門出を心から祝福いたします。
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みなみ食堂
電話:0884-70-1497
所在地:海部郡美波町奥河内字寺前79-1
営業時間:11:30〜14:30(注文締め切り14時)、夜は予約対応
定休日:木曜日

みなみ食堂に限らず、町内の飲食店がともに繁盛して欲しいと願っています。
(ほかのお店様も折に触れて紹介するつもり)
posted by 平井 吉信 at 22:26| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2018年01月08日

howatto(伊豆田裕美さん)の焼き菓子の話題を続けて

前頁からの続き
翌日、「ココナツのサブレ」と「ビスコッティ」(チーズ)をいただいた。
今回はおろしたてのさかもとこーひーの豆で挽いた深煎りのコーヒーで。

食べ物を評価するとき、素材の風味を活かしたと表現されるけれど
素材を活かすとはどういうことだろう。
小麦粉をそのまま焼いておいしいかどうかはわからない。
ところが、素材を混ぜてそこに温度の変化を加え
水分が抜けて香ばしさがつくと(すなわち焼くということ)
元の素材のエッセンスが顔を出してくる。

ということは、
素材を選ぶこと、
そのブレンドを代えること、
熟成の度合いをはかること、
熱を加えることで無限の変化が現れる。

素材の味を活かすとは
砂糖を控えるとか、プレーンに近づけるといったことではなく、
数限りなく試行してつくりこんでいくもの。
強いていえば、素材風味をそのまま使うことではなく
雑味さえもブレンドの妙(旨味)に昇華しつつ
元の素材の個性を再構築すること。

例えば、酸味のない甘いだけのトマトはおいしくない。
酸味と甘みと旨味が高度にそそりたっていないと。
おいしいトマトはまず甘みが舌を滑り出し
口いっぱいに立ちこめて酸味が咽を通り抜け
旨味の後味が余韻を残すが、それもいつのまにか消えていく―。
(ぼくがいつも買っているK農園のトマトはそう)

ブレンドによる引き算がうまく働き、
ブレンドによる足し算でピークを動かしながらも
個性と調和が見えたとき、おいしさにつながるのではないか。
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一口運んだとき、ふいにこみ上げるものがあった。
自分が納得いくまでやってみたかったのです―。
作り手の言葉にならないメッセージが届けられた気がした。
posted by 平井 吉信 at 15:58| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2018年01月07日

プレーンなシフォンケーキが描く世界観 「howatto」(ほわっと)の焼き菓子


前頁から続く
ナガヤの母屋には、吉田絵美さんが運営するカフェと雑貨店がある。
この空間の心地よさは場の力というかおだやかな吉田さんの醸し出すもの。
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そのせいか、次々とやって来られるお客さん(女性が多い)が
やわらかい雰囲気をまとった方が多いように思う。

吉田さんのカフェで
毎月第1土曜日に手作りの焼き菓子を出品される女性がいらっしゃるとのこと。
きょうはその定期販売の第1回目。
作り手の伊豆田裕美さんにお話を伺ってみた。
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― ブランド名のhowatto(ほわっと)とはどんな由来ですか?
食べると心がほわっとするような焼き菓子を提供したいと思って付けました、とのこと。

いただいた名刺に書かれていた言葉は、
「おいしい」を大切に、丁寧に。

傍らで素敵なお母様もサポートされていた。
気取らないけれど気品のある方でお話をするのが愉しい。

この日、出品されていたのは以下のWebを参照いただくとして
https://howatto.wixsite.com/howatto
https://www.facebook.com/howatto/

実は伊豆田さんのシフォンケーキは
おいしい(それもかなり)との評判をさまざまな人から聞いていた。
https://setouchifinder.com/ja/detail/21070
そこでシフォンケーキと焼き菓子をいくつか買って自宅で食べてみた。

まずは、定番のシフォンケーキから。

(ぼくが20代の女性だったら)
とにかく、めっちゃおいしいんです。
もう最初の一口でノックアウト。
とても上品な味でした。などと書くか書かないかは別にして
このシフォンケーキ、別世界に連れて行かれる感じ。
(紅茶は、トワイニングのクオリティ・ビンテージ・ダージリンを3分の香り重視の浅めの抽出で)
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しっとりとした歯ごたえ、
そして口溶けのあと、天国的な余韻を残して消えていく。
甘みは控えめだが、えも言われぬ幸福感。
プレーンなシフォンケーキがここまで人の心を動かせるのかと。
(おおげさと思う人はぜひ自分の舌で確かめて欲しい)。

それはつくっている伊豆田さんが揺るぎない思いで
(関西の菓子メーカーにも勤務されていたらしい)
科学的な根拠と、こうすればおいしくなるという信念でつくられているからだろう。
「おいしい」を大切に、丁寧に、というのは、彼女の世界観と気付いた。

翌日、冷蔵庫に入れていた「マロンとエスプレッソのシフォン」も。
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(直前に電子レンジ200Wの30秒〜60秒で冷たさも熱も感じない微温に戻している)

コーヒーは千葉県から取り寄せている浅煎り豆をハリオV60ドリッパーで薄めに手煎れ。
こちらは栗とコーヒーが積極的にお迎えに来るというわかりやすさ。
休みの日の朝にコクのある贅沢感が漂う。
(基本のトーンはプレーンと同じだが、舌の肥えている人はプレーンの突き抜けた世界観により驚くだろう)。

地元の素材をていねいに仕上げることから生まれる焼き菓子。
でも、量産することはできない。
ほんとうにおいしさを求めて、ていねいにつくる人にはわかる切なさ。

続く

追記
howattoさんの次回の焼き菓子の販売は、以下の場所です。

1/14(日)ねこねこフェスティバル2018 in ボートレース鳴門 会場
鳴門市撫養町大桑島字濘岩浜48-1
9:45〜16:30


posted by 平井 吉信 at 13:37| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

ナガヤの一角 フラワーデザインのお店"Bilton Flower Design"


(前頁から続く)
昨年暮れにナガヤの一角に新しい店が出店されたというので訪れてみた。
戸を開けてみると、そこには造花をアレンジする女性の姿があった。
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ナガヤは場であるが、ここの店内も場となっている。
(どこもナガヤの一角はそうなのだと思う)
部屋の主は、イギリス人の夫(Christopherさん)を持つ日本人の妻(ビルトン育代さん)。
育代さんは起業したばかりだが、冒険心あふれる魅力的な方である。
すでに結婚式場など県内のハレの場で使われていて評価が高い。
http://www.biltonflowerdesign.com/
(Webを見れば彼女のまっすぐな生き方が見えてくる)

みなさんも、人生のさまざまな場面で、
誰かに花を贈りたい、会社に飾りたい、友人に気持ちを届けたい、
ときに自分のご褒美に、などと考える人は一度行ってみたら?

傍らにアメリカ人の夫(Patrickさん)を持つ日本人の妻(ブラウン友貴さん)もいらっしゃる。
ブラウン夫妻も近々事業を立ち上げようとされているとのこと。
(後々ご自宅を訪問するなどお話を聞いてみようと思う)

また、マーケティングに精通されている日本人の男性にもお会いできて感銘を受けた。
ビルトンさんの強力な助っ人、川人弘典さん。
(初対面なのに感覚の研ぎ澄まされた方だと一瞬で伝わってきた。時系列ではすれ違っているが以前にお勤め先を訪問したことが判明。縁とはふしぎなもの)
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場の雰囲気がすべて物語っているよね。
(みなさまの今後のご活躍をお祈りいたします)

続く
posted by 平井 吉信 at 13:29| Comment(0) | 徳島

ナガヤという場に集まる人たち


自分の生きる道を自分でつくりたい、と思っている人は多いけれど
どうすればいいかわからない。
そもそもやりたいことが見つからないこともある。

「何を」やるかはもちろん大切でそれは出発点だけれど
「どのように」やるかがもっと大切と思う。

自分の生き方をするために創業・起業という選択肢がある。
けれど人口減少やインターネットでの情報が錯綜しているなか、
組織に所属してやっていくのも個人でやっていくにもリスクの程度に変わりはない。
むしろ時代を読める人にとっては
この時代をかえって絶好の機会と捉えることもできるのではないか。
しかし従来のビジネスの発想(固定費をかけてハードを整備して借入を返済する)ではうまくいかない。

そこで、いまあるものを磨いていくこと、
風土や文化を意識しつつ理念をつくる。
その原点をもとに経営資源を構築していくやり方が最善。

何も新しいことではない。
強みを掘り下げてそれを活かすこと
(ほとんどは本人さえ気付いていない)。
SWOT分析という手法があるが、
これをほんとうに使いこなしている企業は見たことがない。
たいていはマス目をクロスワードパズルのように遊んでいるだけ。

経営も地域も「あるもの探し」から始まる。
そしてそれをいまの時代に照らして再構築する。
温故知新(温故革新)ともいえる。

古い家屋を改修、再生して使うことは
一定の制約があるなかでやっていくことになる。
そこに自由な発想や飛翔が生まれる余地がある。

リノベーションの枠組みを通じて
感度の高い、感性の豊かな、時代を見据えて何かをしようとする人が集まる可能性がある。
(先月、尾道の空き家再生プロジェクトを研究して四国のある自治体に提案したところだった)

古い民家を改修して雑貨屋を始めた人が徳島市内にいることは知っていた。
けれど、山野草の咲く頃や水がぬるむ季節はついつい海山川へ足を運んでしまう。
今回から手作りのお菓子を定期的に出品される方がいると聴いたこともあって
1月6日に足を運んだ。
そして、古い長屋を活かした試みをナガヤプロジェクトと名付けて
管理運営をされている吉田絵美さんとお会いすることができた。
http://nagayaproject.com/


その昔、中学時代は二軒屋駅から
英才教育で知られる私立中学まで歩いて通っていた。
当時バイパスはできたばかりで
狸の巣がありそうな葦原のところどころに民家が集まっているような地区であった。

中学には丸山先生という怖い数学の教師がいた。
3年間で一度も笑ったことはない。
いつもよれよれの灰色のコートを着て(白墨が積もっていた)
プラスチックの指し棒を持って授業を行っていた。
怖い先生で指し棒で机を叩かれると震え上がったものだが
人を理解させるとはこういうことかと納得できる授業だった。
「恩師」「畏敬」という言葉は丸山先生のためにある。

卒業後、クラスメート数人で沖浜にあるご自宅を訪ねたことがある。
哲学者のような暮らしをされていたことが心に残っている。
その後、沖浜地区はバイパスの整備とともに急激に郊外型SCの銀座となった。
あの頃、葦原を倒して秘密基地をつくった思い出も
あのとき辿った通学路も記憶の彼方に行ってしまった。

初めてナガヤに来られる方は、
県南部から来られる人は沖浜のKFCを左折するとわかりやすいのではないか。

仕事の邪魔にならないようと思ったので
吉田さんとは立ち話程度であったが
このプロジェクトを応援したいと思わずにはいられなかった。


小さな起業には競合のない青い海が必要。
そこには市場はないが、社会の目に見えないうねりから小さな泡が生まれることがある。
稼ぐことの難しさを知っている同士、その泡は互いに近い場所にいると相互に成長できる。

成功した大きな泡は小さな泡を育てることに生きがいを覚える。
それは使命共同体という場。
本音でやっていく人生とか、同じ幸福感を持つ場で大きくなっていくことが必要。
生きる動機のベクトルを合わせたら、互いに成長の渦を巻きながら収益につなげたい。

場という考え方がある。
内側と外側、Iターンと地元など場をどうつくるか。
どのタイミングでどんな仕掛けで融合させるかさせないかの管理が難しい。
(移住者を早く溶け込まそうと地元の濃い人間関係に放り込むとほぼ失敗する)
その意味で地元のしがらみもあるけれど
外の風を知って地元を客観的に(愛情を持って)見られるUターンが
仕掛けるのがうまく行きやすい。

場のなかでひとりよがりにならないこと、
ひがみやねたみを生まないための動き方ができるよう
内の誰かが調整を行う。
しかし場を管理することは困難で、ほとんどの地区でできていないように思う。
(美波町の移住コーディネータ小林陽子さんはそれができていらっしゃる)
https://tokushima-iju.jp/interview/414.html

強いていえば、役場や経済団体なども参画する公民連携の任意組織を置いて
小林陽子さんのようなリーダーがいて
全体会議で方針を定め、それに沿って上がってきたプロジェクトを承認し
応援し調整を行う。
それぞれのプロジェクトは、公民連携組織の下部組織に置くという
ゆるやかなオーサライズがいいかもしれない。

場のなかでは生きていくことのメッセージを出し続けること。
そのなかに多様性を大切にするというビジネス生態系がある。
それを稼ぎにつなげるためのサポーター(有償・無償・公的支援のミックス)が必要。
(経営のテクニックや社会の定石で説明しようとする既存勢力(行政、金融機関)の支援が成果につながらない場面が多いのだが)。

2018年のいまは、
震災後に芽生えた幸福を問い直す心の動きや
本音で生きていこうとする生き方が背後にあることを知って
ブランディングやマネジメントを行う必要がある。

ぼくはそのように整理している。
そしてナガヤとは民間が自由に、しかしベクトルあわせを行いながら
場を醸成(管理というニュアンスではなく)できる場所ではないかと。

続く
posted by 平井 吉信 at 13:24| Comment(0) | 徳島